節分(高土)
「逃がさねぇぞ!」
「やってみろ!」
陣内に声が響いた。紅白に別れ相手の陣地を奪おうと、至るところで火花を散らしていた。
二月といえば節分だろう!と誰が言い出したのだろう。戦況は拮抗しお互いに出方を伺っている状態だ。戦闘が起きなくても緊張状態が続けば当然ストレスが溜まる。戦争中となれば娯楽も限られてくる。
そんな中、定期会議の席で誰かが節分の話をした。そこから思い出話になりついには「節分をしよう!」と声が上がった。「遊んでいる暇はないぞ!」と桂が声を張り上げたが、すでに雰囲気はやるという方向になっている。こうなってしまえば簡単には止められない。
息抜きは必要ではあるが、いつ戦闘が始まるか分からない状況である。警戒もしなければならないし、必要な訓練だってある。
「じゃあ模擬戦みたいにすればいいんじゃね?」
鶴の一声を上げたのは意外にも銀時だった。模擬戦であれば遊びながらでも訓練になる。満場一致で決まりその日の会議は盛り上がった。
紅の陣は高杉と坂本、白の陣には銀時と桂。そして残りのメンバーはくじ引きで決めた。ルールは至ってシンプルで相手の陣に立てられた旗を先に取った方が勝ちである。三郎に豆の代わりにペイント弾を作って貰った。これに当たれば退場というシステムだ。
後の作戦は自由。ペイント弾で全滅させてもいいし、こっそりと旗だけを狙うのもいい。
偶然とはいえ正面から戦うタイプの高杉と隠密、奇襲が得意な銀時で別れた。いつも通りの作戦かはたまた裏をかいてくるかと開始前から盛り上がりをみせていた。
両陣営が一人また一人と倒れていき、最後は高杉と銀時との一騎討ちとなれば盛り上がらないはずがない。旗を取れば勝ちではあるが、お互いにライバル同士で負けず嫌いとくれば、必然的に一騎討ちとなった。お互いに最後のペイント弾。にらみ合いが続き、ギャラリーは固唾を飲んで見守った。
「あの野郎―――!」
結果は銀時の作戦勝ち。まさか木の上に大量のペイント弾が隠されていたとは。それを思い切り頭から被って全身真っ白になった。
水を被って身体についた物は落としたが、陣羽織などはもう使い物にはなりそうにない。おまけに、耳にでも入ったのか違和感がある。
腹は立つが作戦を読めなかったのはこちらであるし、ここが戦場であれば死んでいたし文句は言えない。
「総督!」
「ああ、十四郎。戻ったのか」
「ついさっきな。俺も模擬戦見たかったのに…」
頬を膨らませて不満をぶつけてきたのは、買い出しに出ていた十四郎だ。運悪く当番に当たってしまい、近隣の村へと出掛けていた。
「今度、稽古つけてやるから」
「本当だな!?絶対だからな!?」
先ほどまでの不機嫌さはどこにいったのか。一瞬にして嬉しそうにはしゃぐ姿に、ささくれていた心も癒されるという物だ。
「総督何かあったのか…?」
浮かない顔をする高杉を心配そうな顔で見つめる。
「ちょっと耳に水が入ったのか違和感があるくらいで、たいした事はねで」
「じゃあ俺が見てやるよ!」
そう言うと十四郎は高杉の手を引いて近くの部屋に入っていた。お節介で世話焼きな彼は結構強引な所がある。
部屋で待つようにと言われて暫くすると、耳掻きなど一式を持って戻ってきた。水だけなら耳掻きは必要ない筈だが、ついでにやるつもりかもしれない。
正座した膝を示され素直に頭を乗せる。模擬戦で散々な目にはあったが、最後にこんなご褒美があるなら悪くはない。
そこへ高杉を探しに来た三人が顔を覗かせた。
「あー!!てめっ高杉!!」
「むっ!ずるいぞ高杉!!」
「十四郎ー!ワシにもやっとーせ!!」
試合には負けたが勝負には勝った、という所か。羨ましがる三人にむかって目一杯のドヤ顔をして見せた。
「やってみろ!」
陣内に声が響いた。紅白に別れ相手の陣地を奪おうと、至るところで火花を散らしていた。
二月といえば節分だろう!と誰が言い出したのだろう。戦況は拮抗しお互いに出方を伺っている状態だ。戦闘が起きなくても緊張状態が続けば当然ストレスが溜まる。戦争中となれば娯楽も限られてくる。
そんな中、定期会議の席で誰かが節分の話をした。そこから思い出話になりついには「節分をしよう!」と声が上がった。「遊んでいる暇はないぞ!」と桂が声を張り上げたが、すでに雰囲気はやるという方向になっている。こうなってしまえば簡単には止められない。
息抜きは必要ではあるが、いつ戦闘が始まるか分からない状況である。警戒もしなければならないし、必要な訓練だってある。
「じゃあ模擬戦みたいにすればいいんじゃね?」
鶴の一声を上げたのは意外にも銀時だった。模擬戦であれば遊びながらでも訓練になる。満場一致で決まりその日の会議は盛り上がった。
紅の陣は高杉と坂本、白の陣には銀時と桂。そして残りのメンバーはくじ引きで決めた。ルールは至ってシンプルで相手の陣に立てられた旗を先に取った方が勝ちである。三郎に豆の代わりにペイント弾を作って貰った。これに当たれば退場というシステムだ。
後の作戦は自由。ペイント弾で全滅させてもいいし、こっそりと旗だけを狙うのもいい。
偶然とはいえ正面から戦うタイプの高杉と隠密、奇襲が得意な銀時で別れた。いつも通りの作戦かはたまた裏をかいてくるかと開始前から盛り上がりをみせていた。
両陣営が一人また一人と倒れていき、最後は高杉と銀時との一騎討ちとなれば盛り上がらないはずがない。旗を取れば勝ちではあるが、お互いにライバル同士で負けず嫌いとくれば、必然的に一騎討ちとなった。お互いに最後のペイント弾。にらみ合いが続き、ギャラリーは固唾を飲んで見守った。
「あの野郎―――!」
結果は銀時の作戦勝ち。まさか木の上に大量のペイント弾が隠されていたとは。それを思い切り頭から被って全身真っ白になった。
水を被って身体についた物は落としたが、陣羽織などはもう使い物にはなりそうにない。おまけに、耳にでも入ったのか違和感がある。
腹は立つが作戦を読めなかったのはこちらであるし、ここが戦場であれば死んでいたし文句は言えない。
「総督!」
「ああ、十四郎。戻ったのか」
「ついさっきな。俺も模擬戦見たかったのに…」
頬を膨らませて不満をぶつけてきたのは、買い出しに出ていた十四郎だ。運悪く当番に当たってしまい、近隣の村へと出掛けていた。
「今度、稽古つけてやるから」
「本当だな!?絶対だからな!?」
先ほどまでの不機嫌さはどこにいったのか。一瞬にして嬉しそうにはしゃぐ姿に、ささくれていた心も癒されるという物だ。
「総督何かあったのか…?」
浮かない顔をする高杉を心配そうな顔で見つめる。
「ちょっと耳に水が入ったのか違和感があるくらいで、たいした事はねで」
「じゃあ俺が見てやるよ!」
そう言うと十四郎は高杉の手を引いて近くの部屋に入っていた。お節介で世話焼きな彼は結構強引な所がある。
部屋で待つようにと言われて暫くすると、耳掻きなど一式を持って戻ってきた。水だけなら耳掻きは必要ない筈だが、ついでにやるつもりかもしれない。
正座した膝を示され素直に頭を乗せる。模擬戦で散々な目にはあったが、最後にこんなご褒美があるなら悪くはない。
そこへ高杉を探しに来た三人が顔を覗かせた。
「あー!!てめっ高杉!!」
「むっ!ずるいぞ高杉!!」
「十四郎ー!ワシにもやっとーせ!!」
試合には負けたが勝負には勝った、という所か。羨ましがる三人にむかって目一杯のドヤ顔をして見せた。
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