Sugary × Indulge...!
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Sugary × Indulge...6
『こ、こんにちは〜』
グリーズさんは接客中のため、キッチンカー越しにグリさんに声を掛ける。
「おや、きみはこの間の…」
『その節は本当にお世話になりました』
グリさん、グリーズさんに助けられたあの日の夜。
わたしは高い熱が出て一週間ほど静養していた。
「その後の体調はどうでしたか」
『ちょっと熱が出ちゃって…アハハ、ご挨拶が遅れちゃいました』
「そんなことはお気になさらず」
元気そうで何よりですよ、と優しく笑うグリさん。
オーダーが入り作業に取り掛かかってしまったためそれ以上話しかけられずにいると、わたしの存在に気付いたグリーズさんが声を掛けてくれた。
「あ、きみは…本当に来てくれたのか」
『もちろんです!』
「注文は?」
『えーっと、おすすめはありますか』
「4種類のローストコーヒーかな」
『じゃあ、それを…』
「はいよ。」
ローストの種類は?とグリーズさんが尋ねる。
聞くと、ひのこ・かえんほうしゃ・だいもんじ・もえつきと4種あり火力が高い名前ほど苦味が強いのだそうだ。
うーん…そしたら手始めにひのこローストにしてみようかな。
『ひのこローストを…5つお願いします』
「5つ!?」
『あ、はい、お友達の分もついでに』
「あ、そーゆーことか」
だってよグリ。オーダー頼む、と慣れたようにグリさんへ注文の伝達をするグリーズさん。
『よろしくお願いします…!』
「かしこまりました」
♦︎♦︎♦︎
「お待たせしました」
『あ、はい!』
「ご注文の ひのこロースト5つ です」
『ありがとうございます!』
キッチンカー横にいるリザードンと戯れていたらあっという間にオーダーが完成したようだ。
代金をお支払いし、品物を受け取る。
5人分ともなると1人では手が足りないので、4つをテイクアウト用の入れ物にセットしてくれたようだ。
「こちらは、きみ専用ひのこローストです」
『え?』
4人分のコーヒーが入った手提げ袋とは別に差し出された蓋付きの紙コップを受け取る。
スリーブから指先に伝わるほのかな温かさが、できたての熱さを物語っている。
「ミルクと砂糖、多めにしてます」
『!』
出会った時からグリさんはいつも瞼を伏せていたので瞼の奥にあったその瞳が、今初めてその視線が、こちらを捉えた。
人差し指を唇の前で立てて、しーっと薄く微笑むグリさん。
そして、初めて出会ったあの日に何気なく答えたわたし好みのコーヒーを仕立ててくれたことが嬉しくて、グリさんの初めて見る表情、仕草と相まい胸の奥がどきどきと騒めいていた。
『あ、ありがとうございます…!!』
♦︎♦︎♦︎
帰路の途中もわたしの胸の鼓動は騒がしく、グリさんの笑顔が頭から離れなかった。思い出すたびに心臓がぎゅっとした。
あれはそう、営業スマイル…リピーターを増やすためのビッグスマイルなのよ…!そう言い聞かせてホテルを目指すわたし。
『ただいま!』
「おかえり!」
「初ヌーヴォはどうだった〜?」
『みんなの分も買ってきたよ』
「やったぁ!」
「カナタ、なんか顔赤くないか?」
『んえっ!!?!』
「…確かに、若干?」
「病み上がりなんですから無茶しないでくださいよ」
セイカちゃん、デウロちゃん、ガイくん、ピュールくんの順に買ってきたひのこローストを手渡す。
ふとガイくんがわたしの顔の赤さを指摘し、みんなの視線がこちらへ集中する。
なんでもないよ!一週間ぶりに出歩いたからかな!?息上がっちゃったのかも〜…なんてぎこちなく誤魔化しその場をやり過ごす。
それならいいんだけど…とその場は凌げ、ガイくんはコーヒーを一番乗りで飲んでいた。
「このほろ苦さがクセになる味だよな」
「めっちゃわかる〜」
「ZAロワイヤル後の一杯がまた格別なのよ!」
「夜遅くまでやってて意外に便利なんですよね」
セイカってば言い方がおじさんくさい〜!というデウロちゃんの一声で笑いが起こる。
MZ団のみんなが思い思いにひのこローストの感想を言い合い、わたしも改めて一口、二口と口にする。
うん、焙煎されたコーヒー豆の香ばしい香りが鼻を抜け苦味はミルクでまろやかに、そして溶けてしまいそうになるほどに甘い後味…とっても美味しい!
このカスタマイズはわたし専用…と思ったらまた顔が熱くなってしまいそうで必死に余計なことを考えて煩悩をもみ消した。
♦︎♦︎♦︎
翌日もわたしはヌーヴォカフェへ向かう。
まだ助けてもらったお礼相当のことできてないし…!
なんとかヌーヴォカフェを営んでいる彼らにできること、それは一顧客としてヌーヴォカフェの売り上げへ貢献することだと思い、今日も今日とて5人分…!
「いらっしゃいませ」
『グリさんグリーズさん、こんにちは!』
「今日も来たのか」
『もちろんです!』
「…注文は?」
「今日は、かえんほうしゃローストを5つで!』
昨日は、ひのこローストを頼んだので苦さをワンランク上げてみることにした。はたしてかえんほうしゃロースト…どんな風味なのだろうか。
「OK、グリ…」
「カナタ…」
『!?』
突然、グリさんに名前を呼ばれ心臓が飛び跳ねた。
な、なんだろう…!?
「おれ達に救われた恩に報いるため無理をしてませんか?」
『えっ…!?』
「別におれは善行に見返りを求めているんじゃないんです」
倒れている人がいたらきみも人助けをするでしょう?それくらい至極当然のことをしただけです、とグリさんは言った。
グリさんはいつも通り瞳を伏せていた。
けれど長い睫毛の影に隠れた視線は確かにわたしを捉え、まるでわたしの考えを見透かしているかのようだった。
『…2人はわたしの命の恩人なので、何かお礼がしたくて』
「大袈裟ですよ」
『でも…それじゃあわたしの気がおさまりません…!』
何か2人のお役に立てれば…とぐるぐると思考を巡らせているとひらめいてしまった。わたしもカフェで働かせてもらえないだろうか…!
『グリさん、不躾なお願いなのですが…』
「はい…」
『わたしもヌーヴォカフェで働かせてください!』
「……カナタ、きみは最近ミアレに上京してきたと言ってましたね」
『はい…』
「過去、このミアレに起きた出来事。そしておれ達のこと、もう少し詳しく伝えなくてはならないようですね」
『…え?』
真剣な面持ちでグリさんは話してくれた。
ヌーヴォカフェで働く店員は皆、元フレア団の関係者および親が元フレア団員の子供達であること。
現在フレア団は解散しているが、過去に起こした悪事や騒動で残された者たちへの世間の風あたりは非常に強く、活動の目標はフレア団のイメージ回復。
そしてフラダリさまの当初の理想であった『人々が手を取り合い助け合う美しい世界』を実現すること。
フラダリさまとは、ミアレシティに住む人たちからは、かつて最終兵器で世界を滅ぼそうとした極悪人として扱われている一方で、彼の援助によって命を救われた者も多く、本心がどうであれ身寄りのなかった人たちを救ってくれた事から今もなお尊敬している人間もいるそうだ。
グリさんもグリーズさんもフレア団の犯した罪を糾弾され、素性を隠して生きる羽目になり、かつてのフラダリさんの理念に殉じつつも、その暴走は「愚行」だったと断じるなど、自分達の冷遇もやむ無しとして受け入れているのだと。
ーーーーーーーーーー…
ーーーーーーーー…
ーーーーー…
ーーー…
ー…
「ですので、フレア団と関わりのないきみをおれ達と共に働かせるわけにはいかないんです」
「それにわたし達のヌーヴォカフェは慈善事業で成り立ってる。労働の対価を得られる保証は無いよ」
『…それでもわたしはそんなお二人に助けらました。
確かにフレア団には関わってないし、過去に何があったか詳しくはわからないけど、でも二人のその優しさに救われたのは事実なんです!』
「ですが…」
『ミアレシティをより良いものにしたいと願う二人に恩返しがしたい…だからその想いはわたしも同じ!!』
「カナタ……」
『今日はもう大丈夫です…。
認めてくれるまで諦めません、そのくらいの気持ちなので』
くるりと二人に背を向け何も考えずひたすらに歩く。角を曲がるまで到底振り返る勇気はなかった。
ドンっ
『んえっ…!」
「おっと」
足元を見ながら歩いていたため視野が狭くなっていたわたしは曲がり角で道行く人にぶつかってしまった。
『っててて…、す、すみません…!』
「オレのほうこそ前方不注意でごめんなぁ」
『お怪我はありませんか…!」
「尻もちついとるキミに言われてもしっくりこおへんのやけど」
ほら、立てるか?と手を差し伸べてくれた眼鏡をかけた男性は、関西訛りのあるその話し方で自身の名をカラスバと名乗った。
『はじめまして、わたしはカナタって言います』
「カナタちゃんな、よろしゅう」
左側に流れるツーブロックの髪型で、特徴的なブリッジの丸眼鏡には独特なデザインのグラスコードが付いていて、丈の長いスーツの裾にもそれと同じデザインが施されている。
さすがミアレ。おしゃれな人がいるなぁと眺めていると、唐突に聞かれた。
「なぁ、キミ今めちゃくちゃ悩んどるやろ」
『…え!』
「やないと、こない曲がり角でバチコンぶつからんやろ」
『……う、』
喧嘩別れではないけれど、ちょっと後腐れ悪く踵を返してきた数秒前の光景がフラッシュバックし気まずくなる。
「んー、せやなぁ…ずばりバイト探ししとるやろ」
『えっ!?』
な、ななっ、なんで…!?
なんでそんなことがわかるの…!?
『ど、どうしてそんなことがわかるんですか!?』
「ふん、実はちょお昔にスピリチュアルかじっててん」
『え!?スピ…!?』
「せやで…もう何年も前の話やから、今はもう微力やねんけど」
そう言いながら自分の手の平を見つめるカラスバさんの表情は寂しさを滲ませていた。
「ちょっと、試しにやってみてもええ?」
『へ!?な、何をです!?』
「透視」
『とうし!?!?』
テレビとかで見たことある。
カードの裏面に手を翳し、表面の絵柄や数字を当てるっていうあれ!?この人、そんな能力を持ってるというの!?
「いくで…」
『んぅ…!!』
怖くなって一瞬、目をぎゅっとつむる。
恐る恐る目を開けると目の前にはカラスバさんの手の平。
わたしのおでこあたりに手を翳して、うーん…と唸るカラスバさん。
「わかったで」
『えぇ!』
どきどきどき、何を言い当てられちゃうんだろう…!
「働きたいと思っとる業種はずばり、飲食店…カフェやな!」
『えぇーーーッ!?』
「く…久々にこの力使ったら手ぇジンジンしてきたわ…」
『え、え、ええ、ど、どうしてそんな…!!?』
ただただ今目の前で起きた事実に驚愕し慌てふためくわたし。
カラスバさん…只者ではない…!確かにちょっとスピっていうかなんかその、超能力者の雰囲気はあるもんな…!!?
「ぷっ… っフフ、ハハハ!キミおもろいな!」
『んえぇ!?』
「超能力なんて使えるわけないやん、ポケモンやないんやから」
『そうなんですか!?』
目尻の涙を指で拭い眼鏡をきちんと整えてから、真剣な顔付きでカラスバさんはこう続けた。
「実はさっき、ヌーヴォんとこのお二人さんとキミが話し合ってるのを偶然通りがかりに聞いてもうたんよ」
『…!』
「あの二人にも色々事情があんのは知ってたから、気持ちもわからんでもないけどな。ただ、それ以上に、あん時のキミの言葉に胸を打たれた」
『え…』
「ミアレをより良いものにしたいと願う二人に恩返しがしたい…だからその想いはわたしも同じ、って言うてたやんな」
『はい…』
「オレは好きやで、そういうの」
『グリさんとグリーズさんはわたしの命の恩人なんです』
「ほぉん」
『ワイルドゾーンエリア12で凍え死にそうなわたしを見つけて救ってくれたんです…』
「……………いや何してんねん自分」
『え?』
「いやそれがっつり命の恩人やんなって思て」
なんかこう、道を踏み外しそうんなって良い道へ導いてくれた、んで結果今こうやってお天道さんの下で元気にしてます的なそういうんをイメージしとったから…ガチで命救われてもうてるやん、ドキュメンタルやん、と。
『そうなんです!だから精一杯の恩返しをしたくて…』
「ええ心掛けやんな」
『最初は、毎日たくさんコーヒーを頼んで店舗の売り上げに貢献しようかな…ぐらいで考えてたんですけど、グリさんに無理しなくてもいいと言われてしまって』
「ヌーヴォは慈善活動でやってるんやったっけ」
『はい…。なら、共に働きこのご恩を…!って伝えたら、複雑な事情で…断られてしまい今に至ります』
「なるほどな」
『でも、わたしは諦めません…!
たった一度のお断りで、へこたれてしまうくらいの生半可な気持ちでこの想いを伝えたんじゃないんです…!』
「その意気やで!カナタ!」
カラスバさんが、わたしの肩にポンと手を置き励ましてくれる。また明日グリさんにお返事聞きに行ってきます…!
ちょっとだけ元気出た。メラメラとやる気に満ち溢れるわたし。
「そこで一つ提案なんやけど」
『はい?』
さっきまでの対外的な雰囲気から一変したカラスバさん。
少し凄みのあるトーンで、ここじゃあなんやし場所移そか。と言うのであれよあれよと連れて来られた場所は……
「「「 お疲れ様です!! 」」」
「あんまデカい声で客人ビビらせんといてー」
「「「 っ失礼しましたぁ!! 」」」
「だから、それやめぇて」
「「「 はっ!! 」」」
「はぁ…ごめんやで」
どっ どどど ど、どうしよーーーーーーッ!?!?
to be continued...!
カラスバさん!出せたよ!
関西弁わかんない!ごめん!
♦︎おまけ♦︎
『グリさん!グリーズさん!こんにちは!
今日もお友達分含めもえつきロースト5つを!』
「そんなに売り上げに貢献したいなら注文せず金だけ置いてけ!」
「グリーズ、それはただの恐喝です」
「冗談だよ!」
♦︎おわり♦︎
本当に毎日足繁くヌーヴォ通いするヒロインにグリーズさんにはややうんざりしてほしい( ◠‿◠ )
『こ、こんにちは〜』
グリーズさんは接客中のため、キッチンカー越しにグリさんに声を掛ける。
「おや、きみはこの間の…」
『その節は本当にお世話になりました』
グリさん、グリーズさんに助けられたあの日の夜。
わたしは高い熱が出て一週間ほど静養していた。
「その後の体調はどうでしたか」
『ちょっと熱が出ちゃって…アハハ、ご挨拶が遅れちゃいました』
「そんなことはお気になさらず」
元気そうで何よりですよ、と優しく笑うグリさん。
オーダーが入り作業に取り掛かかってしまったためそれ以上話しかけられずにいると、わたしの存在に気付いたグリーズさんが声を掛けてくれた。
「あ、きみは…本当に来てくれたのか」
『もちろんです!』
「注文は?」
『えーっと、おすすめはありますか』
「4種類のローストコーヒーかな」
『じゃあ、それを…』
「はいよ。」
ローストの種類は?とグリーズさんが尋ねる。
聞くと、ひのこ・かえんほうしゃ・だいもんじ・もえつきと4種あり火力が高い名前ほど苦味が強いのだそうだ。
うーん…そしたら手始めにひのこローストにしてみようかな。
『ひのこローストを…5つお願いします』
「5つ!?」
『あ、はい、お友達の分もついでに』
「あ、そーゆーことか」
だってよグリ。オーダー頼む、と慣れたようにグリさんへ注文の伝達をするグリーズさん。
『よろしくお願いします…!』
「かしこまりました」
♦︎♦︎♦︎
「お待たせしました」
『あ、はい!』
「ご注文の ひのこロースト5つ です」
『ありがとうございます!』
キッチンカー横にいるリザードンと戯れていたらあっという間にオーダーが完成したようだ。
代金をお支払いし、品物を受け取る。
5人分ともなると1人では手が足りないので、4つをテイクアウト用の入れ物にセットしてくれたようだ。
「こちらは、きみ専用ひのこローストです」
『え?』
4人分のコーヒーが入った手提げ袋とは別に差し出された蓋付きの紙コップを受け取る。
スリーブから指先に伝わるほのかな温かさが、できたての熱さを物語っている。
「ミルクと砂糖、多めにしてます」
『!』
出会った時からグリさんはいつも瞼を伏せていたので瞼の奥にあったその瞳が、今初めてその視線が、こちらを捉えた。
人差し指を唇の前で立てて、しーっと薄く微笑むグリさん。
そして、初めて出会ったあの日に何気なく答えたわたし好みのコーヒーを仕立ててくれたことが嬉しくて、グリさんの初めて見る表情、仕草と相まい胸の奥がどきどきと騒めいていた。
『あ、ありがとうございます…!!』
♦︎♦︎♦︎
帰路の途中もわたしの胸の鼓動は騒がしく、グリさんの笑顔が頭から離れなかった。思い出すたびに心臓がぎゅっとした。
あれはそう、営業スマイル…リピーターを増やすためのビッグスマイルなのよ…!そう言い聞かせてホテルを目指すわたし。
『ただいま!』
「おかえり!」
「初ヌーヴォはどうだった〜?」
『みんなの分も買ってきたよ』
「やったぁ!」
「カナタ、なんか顔赤くないか?」
『んえっ!!?!』
「…確かに、若干?」
「病み上がりなんですから無茶しないでくださいよ」
セイカちゃん、デウロちゃん、ガイくん、ピュールくんの順に買ってきたひのこローストを手渡す。
ふとガイくんがわたしの顔の赤さを指摘し、みんなの視線がこちらへ集中する。
なんでもないよ!一週間ぶりに出歩いたからかな!?息上がっちゃったのかも〜…なんてぎこちなく誤魔化しその場をやり過ごす。
それならいいんだけど…とその場は凌げ、ガイくんはコーヒーを一番乗りで飲んでいた。
「このほろ苦さがクセになる味だよな」
「めっちゃわかる〜」
「ZAロワイヤル後の一杯がまた格別なのよ!」
「夜遅くまでやってて意外に便利なんですよね」
セイカってば言い方がおじさんくさい〜!というデウロちゃんの一声で笑いが起こる。
MZ団のみんなが思い思いにひのこローストの感想を言い合い、わたしも改めて一口、二口と口にする。
うん、焙煎されたコーヒー豆の香ばしい香りが鼻を抜け苦味はミルクでまろやかに、そして溶けてしまいそうになるほどに甘い後味…とっても美味しい!
このカスタマイズはわたし専用…と思ったらまた顔が熱くなってしまいそうで必死に余計なことを考えて煩悩をもみ消した。
♦︎♦︎♦︎
翌日もわたしはヌーヴォカフェへ向かう。
まだ助けてもらったお礼相当のことできてないし…!
なんとかヌーヴォカフェを営んでいる彼らにできること、それは一顧客としてヌーヴォカフェの売り上げへ貢献することだと思い、今日も今日とて5人分…!
「いらっしゃいませ」
『グリさんグリーズさん、こんにちは!』
「今日も来たのか」
『もちろんです!』
「…注文は?」
「今日は、かえんほうしゃローストを5つで!』
昨日は、ひのこローストを頼んだので苦さをワンランク上げてみることにした。はたしてかえんほうしゃロースト…どんな風味なのだろうか。
「OK、グリ…」
「カナタ…」
『!?』
突然、グリさんに名前を呼ばれ心臓が飛び跳ねた。
な、なんだろう…!?
「おれ達に救われた恩に報いるため無理をしてませんか?」
『えっ…!?』
「別におれは善行に見返りを求めているんじゃないんです」
倒れている人がいたらきみも人助けをするでしょう?それくらい至極当然のことをしただけです、とグリさんは言った。
グリさんはいつも通り瞳を伏せていた。
けれど長い睫毛の影に隠れた視線は確かにわたしを捉え、まるでわたしの考えを見透かしているかのようだった。
『…2人はわたしの命の恩人なので、何かお礼がしたくて』
「大袈裟ですよ」
『でも…それじゃあわたしの気がおさまりません…!』
何か2人のお役に立てれば…とぐるぐると思考を巡らせているとひらめいてしまった。わたしもカフェで働かせてもらえないだろうか…!
『グリさん、不躾なお願いなのですが…』
「はい…」
『わたしもヌーヴォカフェで働かせてください!』
「……カナタ、きみは最近ミアレに上京してきたと言ってましたね」
『はい…』
「過去、このミアレに起きた出来事。そしておれ達のこと、もう少し詳しく伝えなくてはならないようですね」
『…え?』
真剣な面持ちでグリさんは話してくれた。
ヌーヴォカフェで働く店員は皆、元フレア団の関係者および親が元フレア団員の子供達であること。
現在フレア団は解散しているが、過去に起こした悪事や騒動で残された者たちへの世間の風あたりは非常に強く、活動の目標はフレア団のイメージ回復。
そしてフラダリさまの当初の理想であった『人々が手を取り合い助け合う美しい世界』を実現すること。
フラダリさまとは、ミアレシティに住む人たちからは、かつて最終兵器で世界を滅ぼそうとした極悪人として扱われている一方で、彼の援助によって命を救われた者も多く、本心がどうであれ身寄りのなかった人たちを救ってくれた事から今もなお尊敬している人間もいるそうだ。
グリさんもグリーズさんもフレア団の犯した罪を糾弾され、素性を隠して生きる羽目になり、かつてのフラダリさんの理念に殉じつつも、その暴走は「愚行」だったと断じるなど、自分達の冷遇もやむ無しとして受け入れているのだと。
ーーーーーーーーーー…
ーーーーーーーー…
ーーーーー…
ーーー…
ー…
「ですので、フレア団と関わりのないきみをおれ達と共に働かせるわけにはいかないんです」
「それにわたし達のヌーヴォカフェは慈善事業で成り立ってる。労働の対価を得られる保証は無いよ」
『…それでもわたしはそんなお二人に助けらました。
確かにフレア団には関わってないし、過去に何があったか詳しくはわからないけど、でも二人のその優しさに救われたのは事実なんです!』
「ですが…」
『ミアレシティをより良いものにしたいと願う二人に恩返しがしたい…だからその想いはわたしも同じ!!』
「カナタ……」
『今日はもう大丈夫です…。
認めてくれるまで諦めません、そのくらいの気持ちなので』
くるりと二人に背を向け何も考えずひたすらに歩く。角を曲がるまで到底振り返る勇気はなかった。
ドンっ
『んえっ…!」
「おっと」
足元を見ながら歩いていたため視野が狭くなっていたわたしは曲がり角で道行く人にぶつかってしまった。
『っててて…、す、すみません…!』
「オレのほうこそ前方不注意でごめんなぁ」
『お怪我はありませんか…!」
「尻もちついとるキミに言われてもしっくりこおへんのやけど」
ほら、立てるか?と手を差し伸べてくれた眼鏡をかけた男性は、関西訛りのあるその話し方で自身の名をカラスバと名乗った。
『はじめまして、わたしはカナタって言います』
「カナタちゃんな、よろしゅう」
左側に流れるツーブロックの髪型で、特徴的なブリッジの丸眼鏡には独特なデザインのグラスコードが付いていて、丈の長いスーツの裾にもそれと同じデザインが施されている。
さすがミアレ。おしゃれな人がいるなぁと眺めていると、唐突に聞かれた。
「なぁ、キミ今めちゃくちゃ悩んどるやろ」
『…え!』
「やないと、こない曲がり角でバチコンぶつからんやろ」
『……う、』
喧嘩別れではないけれど、ちょっと後腐れ悪く踵を返してきた数秒前の光景がフラッシュバックし気まずくなる。
「んー、せやなぁ…ずばりバイト探ししとるやろ」
『えっ!?』
な、ななっ、なんで…!?
なんでそんなことがわかるの…!?
『ど、どうしてそんなことがわかるんですか!?』
「ふん、実はちょお昔にスピリチュアルかじっててん」
『え!?スピ…!?』
「せやで…もう何年も前の話やから、今はもう微力やねんけど」
そう言いながら自分の手の平を見つめるカラスバさんの表情は寂しさを滲ませていた。
「ちょっと、試しにやってみてもええ?」
『へ!?な、何をです!?』
「透視」
『とうし!?!?』
テレビとかで見たことある。
カードの裏面に手を翳し、表面の絵柄や数字を当てるっていうあれ!?この人、そんな能力を持ってるというの!?
「いくで…」
『んぅ…!!』
怖くなって一瞬、目をぎゅっとつむる。
恐る恐る目を開けると目の前にはカラスバさんの手の平。
わたしのおでこあたりに手を翳して、うーん…と唸るカラスバさん。
「わかったで」
『えぇ!』
どきどきどき、何を言い当てられちゃうんだろう…!
「働きたいと思っとる業種はずばり、飲食店…カフェやな!」
『えぇーーーッ!?』
「く…久々にこの力使ったら手ぇジンジンしてきたわ…」
『え、え、ええ、ど、どうしてそんな…!!?』
ただただ今目の前で起きた事実に驚愕し慌てふためくわたし。
カラスバさん…只者ではない…!確かにちょっとスピっていうかなんかその、超能力者の雰囲気はあるもんな…!!?
「ぷっ… っフフ、ハハハ!キミおもろいな!」
『んえぇ!?』
「超能力なんて使えるわけないやん、ポケモンやないんやから」
『そうなんですか!?』
目尻の涙を指で拭い眼鏡をきちんと整えてから、真剣な顔付きでカラスバさんはこう続けた。
「実はさっき、ヌーヴォんとこのお二人さんとキミが話し合ってるのを偶然通りがかりに聞いてもうたんよ」
『…!』
「あの二人にも色々事情があんのは知ってたから、気持ちもわからんでもないけどな。ただ、それ以上に、あん時のキミの言葉に胸を打たれた」
『え…』
「ミアレをより良いものにしたいと願う二人に恩返しがしたい…だからその想いはわたしも同じ、って言うてたやんな」
『はい…』
「オレは好きやで、そういうの」
『グリさんとグリーズさんはわたしの命の恩人なんです』
「ほぉん」
『ワイルドゾーンエリア12で凍え死にそうなわたしを見つけて救ってくれたんです…』
「……………いや何してんねん自分」
『え?』
「いやそれがっつり命の恩人やんなって思て」
なんかこう、道を踏み外しそうんなって良い道へ導いてくれた、んで結果今こうやってお天道さんの下で元気にしてます的なそういうんをイメージしとったから…ガチで命救われてもうてるやん、ドキュメンタルやん、と。
『そうなんです!だから精一杯の恩返しをしたくて…』
「ええ心掛けやんな」
『最初は、毎日たくさんコーヒーを頼んで店舗の売り上げに貢献しようかな…ぐらいで考えてたんですけど、グリさんに無理しなくてもいいと言われてしまって』
「ヌーヴォは慈善活動でやってるんやったっけ」
『はい…。なら、共に働きこのご恩を…!って伝えたら、複雑な事情で…断られてしまい今に至ります』
「なるほどな」
『でも、わたしは諦めません…!
たった一度のお断りで、へこたれてしまうくらいの生半可な気持ちでこの想いを伝えたんじゃないんです…!』
「その意気やで!カナタ!」
カラスバさんが、わたしの肩にポンと手を置き励ましてくれる。また明日グリさんにお返事聞きに行ってきます…!
ちょっとだけ元気出た。メラメラとやる気に満ち溢れるわたし。
「そこで一つ提案なんやけど」
『はい?』
さっきまでの対外的な雰囲気から一変したカラスバさん。
少し凄みのあるトーンで、ここじゃあなんやし場所移そか。と言うのであれよあれよと連れて来られた場所は……
「「「 お疲れ様です!! 」」」
「あんまデカい声で客人ビビらせんといてー」
「「「 っ失礼しましたぁ!! 」」」
「だから、それやめぇて」
「「「 はっ!! 」」」
「はぁ…ごめんやで」
どっ どどど ど、どうしよーーーーーーッ!?!?
to be continued...!
カラスバさん!出せたよ!
関西弁わかんない!ごめん!
♦︎おまけ♦︎
『グリさん!グリーズさん!こんにちは!
今日もお友達分含めもえつきロースト5つを!』
「そんなに売り上げに貢献したいなら注文せず金だけ置いてけ!」
「グリーズ、それはただの恐喝です」
「冗談だよ!」
♦︎おわり♦︎
本当に毎日足繁くヌーヴォ通いするヒロインにグリーズさんにはややうんざりしてほしい( ◠‿◠ )
