6/4 ただ今調査中
「では頼んだぞ、仙蔵、文次郎」
学園の長である大川平次渦正による命が下される。
六年い組の二人は学園内でも優秀で、こうして学園長直々の忍務を受けることも少なくない。
今回の忍務はとある町に度々現れるという妙な旅芸人一座を探ることである。
「行ってまいります」
頭を下げて部屋を出ていくと、早速二人は支度に取り掛かった。
旅の二人組、修験者、夫婦、主人と従者。
変姿の術を得意とする二人はありとあらゆる関係の人間となり、周囲を欺く。
「今回は主人と従者か?」
「そうだな。それか夫婦でもいいかもなぁ。文次郎、たまにはお前が妻にでもなるか?」
「本気か?」
「嘘だ」
二人の女装の実力は雲泥の差。文次郎とてそれくらいは理解しているし、そもそも身長差もある。
これだけの身長差を周囲に気取られないようにするには文次郎に負担が大きすぎる。
そうするだけの理由は試験として指定でもされない限り特にない。
「では、主人と従者といったところだな。名は?」
「仙次郎様と従者の文左」
「悪くねぇな」
美しく細面の主人と逞しく無骨な従者。名前は変姿前とあまり変えない方が違和感なく反応できる。
「行くぞ、文左」
「・・・」
無口で無骨な従者と木偶の坊でただ強いだけの従者を従えた主人。
主人が興味を持って旅芸人一座を観覧し、従者は仕方なく共に居る。
そういう設定だ。
***
旅芸人一座の調査はそれなりの日数を要した。
芸人の見世物を見てから町の旅籠に泊まる。
身なりのいい男とその後ろに控える無骨な侍の組み合わせはそう珍しくもなく町に溶け込んだ。
「さて、そろそろ終わるとするか」
旅芸人の調査結果は粗方纏まった。
あとは目立たず、人知れず町を去り、学園に戻って報告をすれば忍務は完了だ。
あの旅芸人は学園長が睨んだ通り忍びの集団で、恐らく町の調査のために居たのだろう。
文次郎たちもあまり長居をして向こうに目をつけられてはたまらない。
さっさと退散するに限る。
「では最後に、せっかくだから主人と従者らしいことをしようではないか」
「あ?」
「従者は主人の言うことはなんでも聞くものだろう?文左、こちらへ来い」
白い指が部屋の中心に敷いてある布団に招く。
「早く、」
「おい、何考えてやがる。忍務中だぞ」
「そうだ。忍務中だ。つまり私は主人の仙次郎で、お前は従者の文左。なりきるならば役割を全うせねばなぁ」
堂に入った仕草で従者を自らの傍に呼び寄せる。
仕方がなく主人の命令を聞いて布団の中央に身を寄せると、主人の細い指が従者の顎を取り、その唇で吐息を奪った。
「文左、可愛い子だ」
これから与えられるのが苦痛であるのか快楽であるのか、期待と不安が入り交じりながら従者に扮した文次郎は主人の仙蔵に身を委ねた。
