それは業というよりも縁です



「どうして」
平和な時代、命のやり取りもない、戦なんてないこの時代で、それでも蜉蝣は片目を失った。
「"業"ってやつかねぇ」
失った片目は本当に天文学的な確率で、強風で飛んだ物で割れたガラスの破片が偶然歩いていた蜉蝣の左眼に向かって飛んだのだ。
「俺は無事なのに」
舳丸の顔には当時のような傷はない。
同じく転生した水軍の仲間たちも皆、顔にも身体にも傷一つなかった。
「なのに、なんで」
左眼を失った姿が、あの頃最も見慣れた姿が懐かしいのに、とても悲しかった。
「人を殺した業なら、あの時代の誰もが背負っている筈だ。俺も、他の兄貴たちも、みんな。それなのに」
「だんだんお前の駄々の捏ね方重に似てきたな」
「放っておいてください」
蜉蝣が年下の、舳丸の涙に弱いのも、業だろうか。あの頃と何も変わらない。
左眼があってもなくても、別に変わらないのだ。
「本当に、"業"ってのは深いなぁ」
どんなに時代が変わっても、平和になろうがなんだろうが、結局蜉蝣は蜉蝣で、舳丸は舳丸で、それは変わりようがない。
「だから勝てねぇんだよなぁ。ほら、行くぞ。今日はウチ泊まってくんだろ」
蜉蝣が舳丸の隣に居続けることだって"業"であるのならば、それだって別に悪くはない。

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