冬の足音
風が冷たい。
僕はこの冷たい風が小さな頃から大嫌いだった。
この風は冬の合図だ。
この風が吹いたら僕の大好きな生き物たちは眠ってしまう。
「なぁ、孫兵、もうすぐだなぁ」
隣にいる左門はいつもこの風を一緒に寂しがってくれる。
「私はこの季節が好きじゃないんだ。だって孫兵が寂しい顔をするから」
「ありがとう。僕も好きじゃないよ。きっと寂しい顔をする僕が悪いのだろうけど、この時期になると左門も一緒に寂しそうな顔になるんだ」
「本当に春が待ち遠しいな」
「そうだね」
それでも、隣に左門がいるから昔よりは好きになれたんだ。
そう告げれば、左門は嬉しそうに笑ってくれた。
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