このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

男前の暴論





左門の手は暖かい。その熱を知ったのは一年生入ってすぐのことだった。
「次屋三之助と言ったな!僕は神崎左門、同じ一年ろ組に所属する!よろしくたのむ!」
 大きく開いた口から発せられる大きな声、そして勢いよく差し出された手。
俺は迷いなくその手を握った。

あれから三年経って、左門の身体そのものが暖かいのだと本当の意味で知ったのはついこのあいだのことだった。

「三之助、もうすぐ次の色の授業があることは知っているな?」

この学園では四年生になると色の授業がある。その授業は全部で四回。一度目が座学、二度目が色町で女子に手ほどきを受ける授業。三度目が一つ上の先輩相手に男役を務める授業。最後が同じ先輩に抱かれる女役を務める授業になる。

忍びたるものどれかではなく全てできなければならない。

これは一年前に卒業していった左門の先輩であり会計委員会委員長、潮江文次郎先輩のありがたいお言葉である。
そしてその言葉通り、全ての授業が得意だったかと言えば、確か潮江先輩は二度目、三度目の点数は異様に低く、四度目の色の授業は先輩を骨抜きにするほどの魔性の男だったと聞く。人は見かけによらない。
そんなことよりも、左門の話だ。左門の言う次の色の授業というのは三度目の、先輩を抱く授業のことである。
「三之助は滝夜叉丸先輩が相手になるのか?」
「いんや、同じ委員会だと後腐れが残りやすいからって断られた。そんでい組の先輩紹介してもらった」
 正直こっちは気を使わなくていいし頼みやすいし顔も悪くないから滝夜叉丸なら楽かと思って声をかけた。断られた。
「左門こそ田村先輩が相手か?」
「いや、同じ理由で断られて、僕もろ組のまだ相手の決まっていない先輩を紹介していただいた!」
 なら左門も俺も恵まれた方だ。作兵衛も藤内も数馬も相手が見つからなくて大変そうだった。孫兵はむしろ向こうから声をかけられていた。イケメンって得だな滅びろ。って作兵衛にいったらお前も滅びろって前に言われた。
「そうか。なら俺らはもう当日待つだけだなー」
「そうなんだ!そこで三之助に頼みがある。僕は三之助が好きだから抱いてくれないだろうか!」

・・・ん?

「左門さん?今なんと?」
「三之助、僕を抱いてくれ!三之助の童貞が欲しい!」
「三年の頃に捨てたんだけど」
「男は初めてだろう!?初めての相手を僕にしてくれ!」

左門ほんと男前です意味が分かりません。

「左門、まず質問な?左門は俺が好き、ってこと?」
「その通り!」
「で、実習で先輩を抱く前に俺に抱いてほしいってこと?」
「その通り!ついでに言うと四度目の授業で先輩に抱かれる前に僕の初めてを三之助に貰って欲しいとも思う!
・・・ダメか?」
小さい左門に上目遣いで心配そうにのぞき込まれた。
さっきまで自信たっぷりに、大声で話していたのに最後だけ小さい声で自信なさそうに言いながらって・・・あざと可愛いなコイツ。


***中略***



「左門、本当にいいんだな?やめてもイヤだもなしだからな」
作兵衛が部屋にいない夜に左門を布団に押し倒した。
(理由は忘れた。二人とも絶対に部屋から出るなって念推された。作兵衛は本当に過保護だ)
「男に二言はない!そもそも僕から言い出したことなんだからイヤなわけないだろう!」
「左門本当に男前だわ」
その代わり色気も雰囲気も何もあったもんじゃない。
雰囲気をなんとか作るべく、布団に押し倒した左門の唇を吸った。
「んむぅ・・・三之助は本当に慣れているなぁ・・・」
真っ赤な顔をした左門が拗ねるように呟く。最初の男になりたいと言っただけあり、左門は以外と嫉妬深いようだ。
「男は初めてなんだから、期待すんなよ?」
そういってもう一度唇を重ねた。


***後略***





1/1ページ
    スキ