花想い
花吐き病、という病を耳にした。なんでも片想いをしていると口から花を吐くという、まぁ随分と奇妙な病だ。
「んで、その花吐き病にかかったと?」
もそもそ。目の前の強面の男が言った。その男、中在家長次はそもそも俺の恋仲で、両想いだと思っていたのに片想いの者がなる病にかかったという。どういうことだ。
「お前は俺に何か不満か、言いたいことでもあったのか?」
両想いで恋仲だと思っていたのは俺だけだったのかもしれない。だが、口吸いをして身体を重ねて、俺はこれ以上一体何を捧げればいいのか。
「……けほっ……」
小さく咳き込むと、口から小さな桃色の花が出てきた。長次の好きそうな可愛らしい花だ。
花を吐いた長次の顔は少し苦しそうで、治るものなら早く治してやりたいところだが、恋人の片思いをなんとかする方法などもちろんわからない。
「それとも、実は俺以外の誰かが好きで、そいつに片思いしてるとかだったり…」
「文次郎、流石の私も怒るぞ」
「だよな」
わかっている。長次は恥ずかしいくらいに俺が好きなのだ。仙蔵にこの間下級生にだけはばれないようにしろ、と言われた。
だが、そうなれば長次が花を吐く理由がわからない。
「片想い、かぁ」
この病は両想いになれば治るという。そう思うとだんだん腹が立ってきた。一体どうしろと言うのだ。
「おい、長次。お前いい加減にしろよ」
「私も怒られても知らん…」
不満そうな長次に勢い余って口吸いをした。
「…けほっ……」
長次が小さな百合を吐いた。確か、治る前に百合を吐くという。
「文次郎からの口吸いは、初めてだったな」
どうやら病は、これでお気に召したらしい。
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