バレンタインデイ独占禁止法
「バレンタインチョコ欲しい」
「毎年やっとるだろうが」
大学の空き教室で留三郎が文次郎に詰め寄る。
毎年バレンタイン商戦に加担をしている文次郎が今更何を、という顔をするのを留三郎が無視した。
「いや、確かに毎年貰ってるけど!今年こそ!仙蔵とお揃いじゃないのが欲しい!!」
そう、毎年留三郎に渡されるチョコレートは近所の雑貨店で買った、文次郎の幼馴染と立花仙蔵と揃いのチョコレートを渡されていたのだ。
「例えば俺のために手作りしてくれるとか」
「面倒くせぇ」
「この間仙蔵と伊作にチーズケーキ作ってたよな!?」
なぜ自分の幼馴染と彼氏の幼馴染には作ってくれるものを当の彼氏には作らないのか、留三郎には理解しかねる。
「ギブミー!手作りチョコ!!」
「うるさい留三郎、廊下にまで響き渡ってるよ」
「全くだ。うるさい。あと文次郎、手作りチョコレートは作ってやれ。器具は私の家にあるものを貸してやる」
授業が終わった伊作と仙蔵が合流してきた。
ちなみに留三郎はサボり、文次郎は休講である。
「おお、悪いな仙蔵」
「マジか!文次郎の手作りチョコ…!!」
「……」
器具まで貸した仙蔵が手作りチョコの相伴に預からないはずがなく、また今年も仙蔵と同じチョコレートが留三郎に贈られることを教えてやるべきか一瞬悩んだ伊作だが、黙ってチョコレート作り当日に偶然仙蔵の家に遊びに行けば自分も便乗できるかも、と口を噤むことに決めた。
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