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その口づけの意味は

 入学したときはただの同学年、それが初めての合同実習で喧嘩をしていけ好かないやつになり、それから幾度もの衝突を重ねて好敵手になり、同時に友人になり、そして気が付いたら気になる男になり、今は恋人になった。
「どうしてお前なんかとこんな関係になったんだろうなー」
 留三郎がぼそっと呟く。知らん、と文次郎が答えると、別に答えを求めていたわけではなかったらしく、返事があったことに驚いていた。
「知らんってそりゃねぇだろう。お前もうちょっと可愛く「留三郎のことを愛しているからだ」とか言えねぇのかよ」
 そう言われても文次郎はそんな可愛げを持ち合わせてはいない。
「本当に可愛げのねぇ男だなぁ、お前は」
 留三郎が不満そうに口を尖らせる。その横顔に文次郎は目を奪われる。九年目のプリンスと呼ばれるだけあって、顔がいい男なのだ。
 そもそも文次郎は留三郎の顔が好きである。正直に言えば告白をされた時に近づけられた顔に反応が遅れて、つい「あぁ」と答えてしまったとは本人には言えるわけがない。もちろん、顔だけが好きだというわけではないが。
「確かに告白は俺からだったけどよぉ、恋人なんだからもうちょっと、って期待するだけ無駄か」
 はぁ、とため息を吐く。段々哀れになってきた。いや、そもそも文次郎が留三郎に意思表示をしないことが悪いのだ。文次郎は意を決して留三郎に近づく。
「おい、留三郎」
 留三郎が口を噤む。最初の呟きに対する返事はお気に召したようである。




その口づけの意味は執着

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