雨乞い
雨音が全てをかき消す。
「また雨か」
一週間毎日続く雨に、辟易する。
「こうも続くと、雨漏りが心配だな」
「雨漏りは必要経費だ。いくらでもとは言わねぇが、別途計上しろよ」
色気のないやり取りが、白々しい。
乱れた夜具と、肌蹴た寝間着。
先程まで何をしていたかなど、誰が見ても明らかだ。
「鉢屋がいい加減にしろ、だとよ」
犬猿二人が仲良くすれば雨が降るなど、言いがかりも甚だしい。
「別に、晴れてる日に何もしてねぇって訳じゃねぇしな」
文次郎が、にやりと笑う。
「それとも、今からもっかい雨乞いでもするか?」
「そりゃあいいな。もちろん、土砂降りになるくらい、だろ?」
雨音がいっそう激しくなったのは、偶然だとは言えないかもしれない。
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