鍛錬の後は
「珍しいな、今日は一人で鍛錬か?」
「ろ組は忍務だ」
夜中、一人で鍛錬に向かう文次郎を見かけた。
「なら、俺も行っていい?」
「好きにしろ」
文次郎を追いかけて裏裏山へ向かう。
三日月輝く夜の闇、二人の走る音が聞こえる。
地を蹴る音、風を着る音、そこに言葉はない。
合図もなく、刃がぶつかり合う音がする。
激しい音に山がざわめき、木々が怯える。
とん、手裏剣が刺さる音、正攻法だけで戦うのは忍びの手法ではない。
楽しい。
鋭い刃の音とは裏腹に、二人の表情は楽しそうに弾む。
闇が深まり、刃の音が止んだ。
「おっし!俺の勝ち!」
「あー!今回は!勝ちを譲ってやる!」
「素直じゃねぇなぁ、もんじ」
鍛錬の勝敗は決した。
声色が変わる。
「なぁ、この後」
「わかってる」
答える声も、先程とは程遠い声色。
二人だけの鍛錬が終わると、二人だけの甘い時間が始まる。
夜は、まだまだ長い。
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