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恋心好敵手知らず



「呑むぞ」
どん、と目の前に置かれたのは一升瓶。
夜深く、突然六年い組部屋に来た留三郎が持ってきたものである。
「どうした、これ」
「貰った」
上等そうなそれは忍たまが気軽に買えるような値段ではなさそうだ。
曰く、昼間に町で助けた知らない爺さんに貰った、との事だ。
一年は組でなくともは組のお約束は変わらないらしい。
「伊作はどうした」
ただ、いつもは呑むなら文次郎ではなく同室の伊作を誘うだろうに、一体どういう心境の変化なのかを問いただしてみる。
それともなにか企んでいるのだろうか。
「伊作は委員会で泊まりなんだとよ」
「なら明日にすりゃいいじゃねぇか」
「明日になったら仙蔵が帰ってくるじゃねぇか」
「伊作と呑むんだったら仙蔵は関係ねぇだろ?」
それとも仙蔵が酒を嗅ぎつけるとでも言うのだろうか。
仙蔵は酒は好きだがそこまでではないのだが、どうにも留三郎にとって仙蔵がいるのは都合が悪いらしい。
「とにかく、俺は今、ここで、呑みてぇの」
人の部屋に来てここで呑みたいとは迷惑な話だが、は組部屋は薬臭いのでせっかくの上等な酒の風味が分からなくなるのが勿体ないのだろう。
そう結論づけて、ならば場所代だとその上等な酒をご相伴に預かることにした。
「なら今日はそのまんま寝るとするか。お前潰れるまで呑むなよ。仙蔵の布団使うと怒るからお前が潰れたら床に転がすか二人仲良く俺の布団でくっついて寝る羽目になるからな」
そんなむさ苦しい自体になりなくなければちゃんと自制をしろと釘を刺すと、留三郎は真っ赤になりながら首を激しく縦に振る。
まだ呑んでもいないのに酔っ払ったように赤い顔の留三郎を不審に思いながら、猪口を探すべく立ち上がった。



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