シーツの幸福



ぱんっ

爽やかな朝、真っ白なシーツのシワを伸ばす音。
まるで柔軟剤のCMのようないい音は、聞いていて心地いい。
「よくそんな音出るな」
「俺も今ちょっと驚いた」
ぽかんとした文次郎の顔が愛おしい。
高校生から付き合い始めて、大学四年間の遠距離恋愛、就職で今度は俺が文次郎の近くに行って、三年間のひとり暮らし×2。
三年目の後半、週末だけの逢瀬がもどかしくなって同棲を切り出したのは俺だった。
確かに二人暮しの方が経済的だな、といかにも現実的な返事をしていた文次郎の耳が真っ赤になっていたことは、一生忘れることはないだろう。
同棲を始めて2ヶ月。10年も付き合っていたというのに毎日が発見の連続である。
卵焼きが甘いのと甘くないの、ポテトサラダに入れる具、掃除の仕方。発見と共に繰り返す喧嘩だって、友人たちには犬も食わないと仲裁の放棄をされた。
「パン焼けたぞ」
洗濯物の音に感動している場合ではなかった。
せっかく焼いたパンが冷めてしまう。
焼いた食パンも、サクッとパンのCMのような音が鳴ればいいなと、ベランダに干された真っ白なシーツを眺めながらリビングに戻った。

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