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初夢は吉夢



新年最初の晩に見る夢が初夢、つまり一月二日に見る夢が初夢である。
初夢に何を見るかで、その年一年の運勢が決まるとも言われる。
「だから食うのか。優しい事だな」
仙蔵の同室、潮江文次郎は獏である。
獏の食事は悪夢。獏に悪夢を食べられるとその夢は吉夢に転じるという。ならば、今夜は出来る限りの悪夢を食べてやれば初夢は良いものになるのだ。
「今夜だけだ。今夜食い溜めするから明日は食わねぇし三が日の食事はこれで終わりだ。当分食わん。逆にお前だって二日は食わねぇんだろ?」
仙蔵は仙狸である。その食事は精。淫夢を見せて精を食べる仙蔵は、大晦日から二日まで絶食状態になる。
「さすがに正月早々淫夢では可哀想だからな。食わんよ」
「お前も優しいじゃねぇか」
そう言いながら文次郎は出掛ける準備をする。
「最初は?」
「一年生だ。あいつらは寝るのが早いからな。そろそろ夢を見るやつが出てくるだろ」
一年長屋に忍ぶことなど、わけも無い。二年、三年と少しずつ難易度が上がるが、これも鍛錬。
教師の夢も食べるが、彼らはもう文次郎の正体を知っていて、二日の夜に忍ぶのは黙認しているのだ。
「では行ってくる。最初は…二郭か。あいつも苦労してそうだからな」

さて、悪夢を食べに行こう。おやすみ、いい夢を。


「それと、私は食事が出来ないので明日はお前を食べに行く。待っていろよ」
ただ、仙蔵のおかげで文次郎の初夢は毎年淫夢である。
「程々に頼む…」
諦めたような、疲れたような声で部屋を出ていく文次郎を、仙蔵はあけましておめでとう。今年も良い夢を。と送り出した。

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