恋人のサンタクロース
クリスマス、子供たちが寝静まる頃にやってくるそれを担うのは、サンタクロースという名の仕事人である。
「これで最後の家か?」
「ああ。あとは家に帰るだけだ」
定番の赤と白の服を着た2人が手元の地図と計画表を見ながら頷き合う。
これで、晴れて今年の大仕事は終了、2人揃って帰路につく。
トナカイとソリは最後の家で先に事務所に帰るように指示をしてあるので、今頃事務所のソリ庫とトナカイ舎に帰っていることだろう。
休み明け 27日最初の仕事は頑張った彼らを労うことだ。
「文次郎、仮眠したらあとは暇か?」
「おう。特に用事はねぇな」
「なら付き合え。クリスマスプレゼントを買いに行くぞ」
「仙蔵、お前さっきまで何やってたか覚えてるか」
先程まで2人がやっていたのはプレゼントの配達である。その仕事が終わってからまだ誰かのプレゼントを買いに行くというのか、と明らかに嫌そうな表情をした文次郎を仙蔵の声が制する。
「恋人はサンタクロースなのだろう?」
つまり、自分にクリスマスプレゼントを贈れと催促しているのだ。とんだサンタクロースもいたものだ。
「なら、俺にもなんかくれるのかよ」
「当然だ。だから行こうと言っている」
「わーったよ、でもその前に仮眠な」
「おう。そしたら着替えて、買い物だ。ディナーは家として、ランチの店は11:30で予約してあるぞ」
「断られるとか思ってなかったのかよ」
用意周到な仙蔵に文次郎が呆れた顔をすれば、仙蔵は楽しそうに笑った。
「お前も私もサンタクロースなんて職業を選んだんだ。人にプレゼントを贈るのが嫌いなはずがない」
家に帰ればまず暖かい布団で仮眠をして、朝ご飯は抜いて早めのランチタイム。
その後はプレゼントを選んで、夜には家でゆったり過ごす。ディナーなんて呼んだけれど、きっと今日ばかりは面倒でコンビニおでん。
おでんを食べながらクリスマスプレゼントを交換して、そして2人はもう一度暖かい布団に入るのだ。
25日の朝が来たらみんなのサンタクロースは終わり。
そして恋人のサンタクロースの始まり。
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