食うもの、食われるもの
狼男、吸血鬼、かぼちゃ頭に魔女。
平成の世は平和だけあって楽しいイベントを増やすことに余念がない。
おかげで数年前に流行したこのハロウィンというイベントはあっさりと現代日本の年中行事に含まれた。
「文次郎、お前に良いものをやろう」
仙蔵がそういう時はろくなことがない。
案の定渡された紙袋には妙な服が入っていた。
「お前のような粗野で粗暴な男には吸血鬼よりも狼男だと思ったのだが、あいにくと気に入ったデザインがなくてな」
マントとシャツ、リボンタイ、ご丁寧に牙まで入った紙袋を半ば強制的に受け取らされた。いつも文次郎に拒否権はないのだ。
「お前はなんの仮装するんだよ」
自分だけ恥ずかしい思いをするなど許さないとばかりに聞けば、爽やかな笑顔で自らの衣装を取り出した。
「吸血鬼には襲われる哀れな美女が必要だろう?」
紙袋から出てきた真っ赤なドレスを着る仙蔵を想像すれば、どう考えても女吸血鬼カーミラしか思い浮かばないが、指摘はせずにおいた。
とはいえ結果的には俺が食われたのだから、やはり仙蔵の仮装はカーミラだったのだと文句を言ったらもう一度食われたのは言うまでもない。
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