このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

死に至る病[side.M]



潮江文次郎が原因不明の病に罹った。
その噂は既に学園中に広まっている。
病についてはまだよくわからないが、分かっていることはどうやら口吸いをすると感染するらしい、治療法はない、この病に罹った者は五日ほどで死に至り、最後の一日は痛みに悶える、ということのみだ。
「で、文次郎。お前はあと五日ほどで死ぬらしいな」
唾液、というのとで、万が一にも他の者が咳などを浴びることのないようにと離れに隔離された文次郎。
見舞いに来た仙蔵は、文次郎の恋人だ。
「何しに来た」
誰にも感染させたくない、苦しむ姿を見せたくないとすぐに離れを望んだのは文次郎自身だった。そして、そこを立ち入り禁止にしたのも文次郎自身だ。
「いや、痛みに悶えるお前の顔を拝みに来ただけだ」
いつもの人をくったような笑み。それでいい。文次郎は仙蔵に同情も涙も求めていなかった。
だが、仙蔵に感染させたくもない。
「おい。唾が飛ぶかもしれん。早く出ていけ」
愛しい仙蔵と口吸い出来ないのも辛い。
しかし、そんなこと言えない。それは文次郎自身の気質と、絶対に感染させたくないという気持ちの両方であった。
しかし、相手は立花仙蔵、一筋縄では行かない相手なのだ。

ちゅ

唐突な口吸い。
文次郎は大きな目を更に大きく開けた。

「さて、これで文次郎は無駄な心配をしなくていいな。あぁ、今から二人でどこかで暮らすか。あと五日の終のすみかを探しに行こう」

1/1ページ
    スキ