空白の時間
卒業してから早三年、俺は卒業後に入った城が攻められ、円満退職という名のフリーに転向を余儀なくされた。今は団蔵の家の会計と忍びの両立をしている。
<中略>
「懐かしい顔に会ったな」
飛蔵さんに呼ばれて部屋に入ると、そこには六年間同室として暮らしていた男、立花仙蔵がいた。飛蔵さんの会わせたい依頼人とは、仙蔵のことだったようだ。
仙蔵に会ったのは卒業以来だった。たかだか三年ではそう姿が変わることもあるまいと思っていたが、俺の予想を裏切り、仙蔵は当時のトレードマークともいえる長く美しい黒髪がばっさりと切られ、結んで肩より上程度の短さになっていた。
<中略>
話を聞くと、仙蔵もフリーでやっているとのことだった。今回はとある城の依頼を完遂するために、加藤村の馬借に協力を仰ぎたいということらしい。依頼の内容については、一応加藤村の会計をしているとはいえ半分部外者の俺は退出した。
依頼が終わると、仙蔵はすぐに出るのかと思えば少し余裕があるらしく、一晩加藤村に泊まっていくと言い、その日は俺が加藤村で間借りしている部屋に泊まっていった。
「久しぶりだな」
「あぁ」
話すことは多くはなかった。三年間共にいなかった期間を考えれば、話すことはいくらでもあると思ったのだが、お互いにそんなに会っていない期間があったとは思えないほどに、ずっと隣にいたような気がしたのだ。
ただ、唯一聞きたいことがあった。
「髪、切ったんだな」
「あぁ、私もお前と同じで城が攻め落とされてな。燃えていく城で毛先が焦げてしまったのだ」
寂しそうに言った。あの頃と変わらないと思っていた横顔には、俺の知らない三年分の何かが詰まっていた。
<後略>
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