メリークリスマス
「クリスマスイブはラブホテルに行こう」
「頭沸いてんのか」
呆れた顔でケーキをつつく文乃。正直に言って女同士で、しかも仙セレクトのおしゃれなカフェでする話ではない。
「ほう、言うなぁ文乃。ところで、昨年の私の誕生日に約束をしていたのにまんまとインフルエンザにかかったのはどこの誰だったか?」
綺麗な顔を悪そうに歪めて言った。
「仙、待て。あれはアタシの誕生日含め二日間お前にあげることで決着はついただろうが」
「私は納得していない」
理不尽である。
「わかった、あの件は本当に悪かった。それはわかったんだが、なんでラブホテルなんだ?」
いつもはそんな妙な場所ではなく、普通に二人の部屋でしている。というか同じ家に住んでいるのに今更なぜ金をかけて他所へいかねばならぬのか。正直無駄な出費はしたくない倹約家潮江文乃である。
「私が行ってみたいだけだ」
***
クリスマスイブ、潮江文乃と立花仙は本当に都内某ホテル街にいた。
「文乃、プール付き、SMルーム、回転ベッド、より取り見取りだがどれがいい?」
「普通がいい。つかマジで入るのかよ」
「往生際が悪いぞ文次郎、男に二言はないだろう」
「今は女だ」
文句は言いつつもここまで来たのだ。実際はそこまで嫌ではないのだろう。
ホテルの中に入ると、無人のロビーにパネルが置いてあるだけの、よく噂で聞くタイプのラブホテルであった。
「仙、やり方わかんのかよ」
「安心しろ、調べてあるに決まっているだろう」
一番オーソドックスな部屋のパネルを選び、中から出てきた鍵を指先にひっかけてくるくる回しながら先へ進む。
廊下もエレベーターも薄暗く、いかにもそれらしいラブホテルの作りに少し緊張してきた。
部屋に入ると用途の分かり切っている大きなベッドに無駄に大きなテレビ、ピンクの照明、怪しいファイル。おそらくファイルの中身は大人向けの玩具のカタログだろう。
「文乃!どれがいい!」
仙は喜々としてテレビ欄を文乃に見せる。
そこには「人妻」やら「女子〇生」やら生々しい文字が躍っている。
「おい、見ねぇぞ」
テレビ欄から目を逸らすが、仙は文乃の言葉を無視してテレビのペイチャンネルをつけた。
流れてきたのは女子〇生とやらの番組である。
「おい、仙。これ本当に楽しいか?」
どう考えても20歳は越えていそうな女性がいかにもコスプレちっくなブレザーを着て男の股間に顔を埋めている。わざとらしくじゅぷじゅぷと音を鳴らしているのも官能を通り越して笑えてきた。
「な、なぁ、えっち、な、気分になったか?」
仙も声が震えている。えっちな気分どころではない。
「ふみ、のっ、チャンネル、変えよう」
仙の腹筋が崩壊する前にチャンネルを変えた。今度は人妻だった。
今度は玄関で宅配便(おそらく〇川急便)の男に後ろから攻め立てられている。大音量で流れる喘ぎ声は今度こそ二人とものツボに入った。
「せんっ、てれび、消すぞっ」
「ああ、わらいが、止まら、ぶふっ!」
埒が明かない。なんとか笑いをこらえてテレビを消し、二人の笑いが収まるのを待った。
「文乃、仕方がない。これでいいか?」
次に仙が渡してきたのは、大人の玩具とコスプレ用具のカタログだった。
基本的なローターやバイブ、電マなどもあるが、仙と文乃の探し物である双頭バイブもあった。
二人は女同士であるが故に、具合わせか双頭バイブくらいしか「繋がる」方法がない。
「結局家でヤるのと一緒じゃねぇか」
軽く文句を言うが、せっかくのクリスマスだ。たまにはいつもの違うのも悪くない。
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