神隠し

神崎左門は三年生にしては背が低い。
その理由を知っているのは、今の三年生以上の生徒と、当時いた先生方だけだ。


「神隠し」



左門は決断力のある迷子だ。
それは一年生の頃から変わらない。
その日も左門は夜中に厠へ行くと言ってふらっと長屋を出て行った。
当時はまだ作兵衛も同じ一年生。夜中に出て行った左門に気づくものは誰もいなかった。

翌朝、学園は大騒ぎになった。当時一年生だった神崎左門が消えたのだ。
今までももちろん神崎や次屋といった新一年生の迷子が消えることはよくあった。
しかし、二人の迷子を危険視した当時の上級生が夜間鍛錬の際に一年長屋付近を見回りすることで防いでいた。
その晩も、当時四年生だった潮江文次郎、七松小平太、中在家長次の三名が夜間鍛錬と見回りを行っていた。
だが、誰も左門の気配を感じ取る者はいなかった。

学園中を捜索し、近くの森や林、町や村も全て学園の上級生、教師が総出で探したが、神崎左門は見つからない。
一年生の足ではいくら足の速い左門でも一晩ではさほど遠くに行くことはできないと言われていた。
それなのに、すでに三日たっても神崎左門は見つからない。

「俺が見てなかったから・・・」

当時からまるで迷子二人の保護者のようであった作兵衛は自分を責めた。
そして、見回りをしていた三人も気配に気づけなかった未熟な己を責めた。
それから十日、神崎左門の大々的な捜索は打ち切られた。

それでも生徒も教師も出かける際には常に周囲に気を配り、神崎左門を探した。



そして一年、神崎左門は見つからなかった。



もう誰もが諦めていたある日、ひょっこり左門は出てきた。
裏裏裏裏山で眠っているところを五年生に進級していた潮江文次郎と七松小平太が見つけたのだ。
だが、違和感があった。
左門は一人で裏裏裏裏山にいたというのに、当時のままの綺麗な寝間着、成長期の子どもなのに全く伸びていない背、そして全く伸びていない髪。
そして、左門に今までどうしていたのかと聞けば、今までも何も左門は昨日厠へ行くつもりが山に来たという。
覚えているのは、誰かと一緒だったということだけだ。



神崎左門は三年生にしては背が低い。それは、一年間の神隠しによるものである。
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