鬼の不在
会計委員会の委員長は代々鬼になる。
清く正しく美しく、賄賂も何も許さず、学園で決められた予算会議の場以外の温情はなく、必要経費はその都度。不必要な経費は減らせと迫る。
予算会議で他の委員会からの猛攻を一手に引き受けるその姿に尊敬と畏怖を込めて鬼と呼ばれるのだ。
「私も鬼と呼ばれるよう頑張らねばな」
昨年潮江文次郎会計委員会委員長が卒業して以来、委員長代理として田村は日々鍛錬を欠かさず、予算会議では一年上の先輩がいるにも関わらずそれなりの結果を出せるように頑張ってきた。
しかし、まだ遠い。新しく入った一年生にも、そして他の委員長からもそうは呼ばれない。
「先輩も頑張ってらしたのだから」
潮江にも一年上はいなかった。
いつもこぼしていた。
『委員長の先輩方はお優しい。また手心を加えられた。だから、まだ鬼にはさせてもらえんのだ』
潮江も代理の時分には鬼の称号は冠されなかった。
鬼の会計委員長は、自ら名乗るのではなく、皆が自然とそう呼ぶように。つまり、皆から鬼と認めて貰うものなのだ。
そして、潮江が鬼と呼ばれるようになったのは、六年生になってから。
「鬼もーうち!福もーうち!」
会計委員会独特の節分の掛け声。
今、我が委員会に鬼はいない。
田村もあと少しで六年生。
「来年こそは、私も鬼になりたいものだ」
鬼の不在はもうすぐ終わる。
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