本と山
本に囲まれるとは、いつでもどこにでも行けるということである。
古代にも、未来にも、他の世界にも、夢の世界にも、行ったこともない国や、誰かの心の中にさえ。
故郷にいた頃は本を読むということは出来なかった。
家には本などという高価な物はないし、産まれたばかりの妹と弟の面倒を見なければならない私にそのような時間はなかった。
だから今、図書館に通っている。
そこから出なくとも構わない。それさえあればいいと思っていた。
「長次、私にもその本貸してくれ!」
入学してから数ヶ月。
いつも本を読んでいる私といつも外にいる同室の小平太の会話は少なかった。
それでも、部屋にいる時に小平太が騒がしくすることもなく、居心地の悪い部屋ではなかった。
そんな私に、本を貸してくれと言ってきたのは、これが初めてであった。
「私、ずっと文字の勉強をしていたんだ!だから長次と同じ本が読めるぞ!」
驚いた。部屋にいる時、静かだとは思っていたが何をしているか興味などなかった。
本さえ読めれば同室が何をしていようが興味はなかったのに、小平太は私と同じ本を読みたくてずっと文字の勉強をしていたのだ。
そう思うと、私は小平太のことがもっと知りたくなった。
本だけでなく、人のことをもっと知るべきだと思った。
「では、今度私も一緒に鍛錬に連れて行ってくれないだろうか。まだ慣れていないから迷惑かもしれないが」
「大丈夫だ!一緒に行こう!その代わり私が読めない字を教えて欲しい!」
この日から、今までただの同室であった私たちが友人となった。
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