手癖



自慢話がひと通り済んでから、滝夜叉丸がふと、愛おしげに自らの人差し指を見る時がある。
本人が気付いているのか、分からない僅かな癖。
彼の目線の先にある、その指先にはまるで約束の証のような、赤い線。
約束の相手は、愛おしい彼女。
冷たい鉄で出来た彼女を、滝夜叉丸は愛おしげに呼ぶ。
その彼女が付けた、赤い傷。
それを愛おしげに見る癖は、きっと本人も気付いていない。
「喜八郎はたまに両手の硬さを確認するみたいに握る癖があるな。まるで、踏子ちゃんを握っていない手が寂しがっているようだ。きっと気付いているのは観察眼に優れているこの私だけだろう。お前自身すらも気付いていなかったのだから」
僕も、人のことは言えなかったのだと、指摘されて初めて気付いた。
そして踏子の感触が恋しくなって、穴を掘ろうと部屋を出た。

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