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会計委員長の角



文次郎の額に角を認めたのは三年生の夏のことだった。
初めはいつものように苛立ちに任せて木や壁に額を打ち付けた結果の瘤であると思っていた。
しかし、昼間や寝る寸前までそのようなモノは無かったと気付いた。
それは文次郎が眠っている時のみ見られるのだ。
会計委員会所属の文次郎は三年生当時、既に委員会室での四徹までは体得していた。
もちろん、誇るべきことではない。
忍たるもの、心身の健康が最優先だと思う。
そのように予算会議前のみ四徹を敢行する文次郎は、六年生に上がった今ほど無茶な鍛錬もせず(そもそも夜間鍛錬は四年生まで許可されていなかったが)殆どを長屋の布団の中で睡眠をとっていた。
その文次郎の額に突如角が生えた。
いや、正確にはある日突然気付いてしまったのだ。
一度気付いてしまったら気にせずにはいられない。
それが毎晩傍にあるのなら尚更だ。
私は気になることは放置できない質なので、率直に文次郎に聞いてみることにした。
聞くと、文次郎は鬼と人との合いの子なのだそうだ。
意識のある時は角を隠していられるのだが、眠っている時にはどうも気が緩んでしまうらしい。
実際昔から生えておるのだが、最近角が大きくなってきたとのことだ。
文次郎の母親である鬼の言うことには、合いの子は歳を重ねる毎に角が大きくなっていくらしい。
本物の鬼はもっと成長が早く、十の頃には立派とも言える角が生えているそうだ。
合いの子は角が生える以外大した違いはないそうで、人に混じる合いの子はこの学園にも他にもいるかもしれないと文次郎は言った。
「それで、その角は何か役に立つのか?」
「恐らく、頭突きで人を貫くことはできんだろうな」
役に立たない。


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