壬生狼との対峙(番外)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幕末─京都。
毎夜血で染まるこの場所で、緋村抜刀斎は今夜も刀を振るっていた。
血溜まりの広がる足下には今し方己に斬られ絶命した男。
それを見下ろしながら背後に感じる気配に視線を移す。
「盗み見とはいい趣味だな。」
背後に佇む桜の木。
樹齢数十年は優に越えているであろうその太い幹の後ろで影が揺らめいた。
「相変わらず斬るとこは見られたくないんだな。」
月明かりに照らされた口元が弧を描き緋村へ言葉を投げた。
現れたのは緋村と変わらぬ程の背丈に、肩まで伸びた栗色の髪をした女。
「名無しのか…。」
敵方でないとわかり緋村の表情が少しばかり緩んだ。
権兵衛は緋村の方へ歩み寄ると、目の前の男を見下ろし呟いた。
「即死ってとこか…。」
「………。」
権兵衛の言葉に緋村は何も口にはしない。
「死に際に呻いたり、のたうち回る姿なんか見たくないもんな。妥当だよ。」
緋村は男から視線を逸らすと刀を鞘へ納めた。
「お前は何故ここに?」
「飯塚さんが少しばかり遅れるからそれを伝えに…。後…、狼達が嗅ぎ回ってるらしいから、奇襲にでも合ってないか様子見に。」
権兵衛は懐から飴を取り出し口に啣えた。
緋村は権兵衛の余りの緊張感のなさに呆れてしまっていた。
「お前…少しは警戒しろ。」
「何を?」
飴を舌先でつつきながら緋村へと振り返った権兵衛はその大きな目で緋村を見つめた。
「先刻の様に気配を隠さずに居ればすぐに新選組が嗅ぎ付けるぞ。」
「別に隠すつもりもないし、鉢合わせた時はその時だ。」
「命が幾らあっても足りないぞ…。」
「生憎まだ死ぬつもりはないから。」
「…はぁ…。」
緋村は馬の耳に念仏だと呆れて溜め息を吐いた。
1/7ページ