狼に目をつけられた猫
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「心配されなくても大丈夫ですよ。自分の主人くらい自分で守れますから。」
「その事に関しては何も心配してはいませんよ。私は貴方の内の話をしているんです。」
「アタシの…内?」
真剣な顔でそう言った大西に権兵衛は目を丸くした。
大西はしばらく黙ったまま、手元の懐中時計を見詰めていた。
「何だか…、貴方が…。」
「?」
そこで言葉を飲み込んでしまった大西に権兵衛は首をかしげた。
守る事に関しては心配していないのなら、他に何が不安なのか。
権兵衛は次の言葉を待つように大西を見つめていた。
「…旦那様?」
これまで見た事もない神妙な大西の表情に権兵衛が困惑していると、にわかに扉の向こうが騒がしくなった。
「0時丁度です…。」
大西の言葉通り懐中時計の針は天辺を指示していた。
ソファーから腰を上げると再び大西の前に立ち塞がった権兵衛は扉の外に意識を集中させた。
「………。」
権兵衛は扉から視線を逸らす事無く腰に携えた刀の柄に手を添えている。
窓のない地下室は風の音すら聞こえない。
水を打った様な静けさが辺りを包む。
―バンッ…!!!!
突如地下室の扉が勢い良く開かれ誰かが物凄い勢いで目の前の権兵衛へと向かって来た。
―ガキィン…!!!!
刀のぶつかり合う音が響いた。
「なんだ女か…。」
権兵衛の刀越しにそう呟いたその男は刀を弾くと後方へと飛び退いた。
男はボサボサの髪を掻きながらギラついた目で権兵衛を見ると、弧を描く唇から舌を覗かせ舌舐めずりをした。
権兵衛はそれに動じる事もなく再び大西の盾になる様に移動する。
「退けよ、女。」
「何故?」
「お前みてぇなちびっちぇ女が俺に勝てる訳がねぇだろ。それに女を殺るのは俺の趣味じゃねぇんだ。死にたくなきゃ部屋の隅にでも行ってろ。」
そう吐き捨て一歩間合いを詰めて来た男に権兵衛は表情一つ変えず、大西の前から動こうとはしない。
「おい、聞こえたか?」
「あぁ、聞こえたよ。」
「ならふざけてねぇでさっさと退け。俺は気の長い方じゃねぇんだ。」
「嫌だと言ったら?」
面白そうに笑いそう言った権兵衛に男は表情を変えた。
「女が粋がってんじゃねぇ!」
「ははっ、粋がってのはどっちだ。身の程知らずの可哀想な奴。」
「さっさと退けッ!このアマが…ッ!!」
痺れを切らした男は刀を振り上げ権兵衛へと斬りかかった。