狼に目をつけられた猫
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「こっちは問題ないか…。」
その頃権兵衛は屋敷の屋根裏を一部屋ずつ回り外から侵入されそうな場所がないかを調べていた。
屋敷には屋根裏が五つ程ある。
殆どは物置の役目をしているが、幾つかは何もない空き部屋となっている。
その為普段から人の目が行き届いて居らず、そこに身を隠されでもすれば厄介だと権兵衛は思った。
いっそ中を調べ終えたら全ての屋根裏の入り口を塞いでしまおうと、入り口のある階段には工具箱と数枚の木の板が置かれていた。
「ひとりの方が余っ程増しだな…。」
権兵衛は藤田の事を思い出しため息をついた。
事実その為にああ言って藤田から離れたのだ。
ああも横目に視線を寄越されては苦痛で仕様がないし、居心地が悪すぎる。
「何なんだよ、あの見透かした様な眼は…。」
応接室で合った藤田の黄金色の眼を思い出しそう呟くと権兵衛は屋根裏の床に開いた入り口から下の階段へと飛び降りた。
「よっと…。」
踏み台を足元に置きその上で背伸びをし屋根裏の扉を閉めた。
「此方でしたか。」
「…!!」
いきなりの背後からの声に驚き権兵衛は振り返った。
「あ"ぁっ…!!」
途端、不安定な足場がグラつき権兵衛が踏み台から足を滑らせると、先刻の声の主がそれを抱き寄せる様に受け止めた。
権兵衛の視界に広がる蒼。
権兵衛の眼が微かに鋭くなった。
自分を受け止めた目の前の人物から香る血の臭い。
「大丈夫でしたか?」
自分の頭の上から降ってきた声に権兵衛は顔を上げると、そこにはあの笑みを浮かべた藤田の顔があった。
「あ…、はい。」
権兵衛はまた見る羽目になってしまった笑顔に今日はツイてないなと思った。
気付くと藤田の胸に顔を埋める様な形で抱き止められていて、藤田は権兵衛の右手を取り腰に腕を回し権兵衛を支えていた。
「すみません。私の不注意で…。」
「いえ、いえ。怪我をされないで良かった。」
権兵衛が藤田から離れると、藤田は腰に回していた腕を解いた…、
が権兵衛の右手は離さずにいた。