開き直る狼と猫
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「なんだ?」
「あの…藤田さんですよね?」
「あぁ。誰だと思って部屋に入って来たんだ。」
少し馬鹿にした様な言い方が頭にきたがそれを抑え権兵衛は続けた。
「何か雰囲気がいつもと全然違うと言うか…。」
権兵衛の言う通り、今日ここへ訪れた時から斎藤の顔に藤田の笑みは無く、何処からどう見ても悪人面としか言いようがない権兵衛の良く知る斎藤そのものだった。
「なんだ、何時もみたく笑っていた方がいいのか?」
「いえ、そう言う訳じゃ…。」
「なら別に構わんだろう。俺も日長一日ああしてるのは鬱陶しいんだよ。」
そう言うと斎藤は権兵衛の向かいの長椅子へ腰を下ろした。
「急にどうされたんですか?」
「明日になればお前は俺の部下として大半は行動を共にする事になるんだ。そんな人間に終始あんな調子で笑っているなんざ御免だからな。」
その理由には流石の権兵衛も納得がいった。
またこっちの動揺でも誘っているのかと思ったが目の前の斎藤が至極面倒臭そうに言ったのを見ると本当にただそれだけの理由の様だ。
「俺から言わせればお前もそうだろう?」
「…へ…?」
経歴書から顔を上げると斎藤は笑みを浮かべ権兵衛を見ていた。
やはりあの優しげなものとは程遠い、悪巧みでもしている様な笑みだ。
「俺に対していつまでもそう礼儀を払っているのは窮屈だろう。」
「…はい?」
「いつかの飴屋の親父が言っていたな。お前は普段そんな澄ました様な口は聞かんと。」
斎藤は煙草を一口呑み吐いた紫煙越しに権兵衛を見据えていた。
「ならお前も普段通りにしたらどうだ。これから俺に猫を被って見せたところで何の得にもならんぞ。」
「別にそんなつもりは…。」
「まぁ、無理強いはしないがな。いつまで保つかが楽しみだ。」
そう言い鼻で笑った斎藤は権兵衛を残したまま何も言わずに自室を出て行った。