弄ばれる猫
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それから数週間京都から定期的に東京へ要調査事項の書類が届くようになり、食客の仕事が手薄になっていたのもあって権兵衛はほぼ毎日のように署へ出入りしていた。
斎藤の送ってきた書類には謀(はか)ったかのように志々雄真実に関する内容が記されていた。
志々雄も元は長州の人間だ。
同じ古巣の者同士。
志々雄に関する情報は無いわけではないが、こうも陰湿な方法でこちらの動揺を誘うような斎藤のやり方に少々腹が立つ。
だが情報を提供しない理由もない。
寧ろ権兵衛は今そう言う立場の人間だ。
「…昔と変わらないなぁ…。」
書類には志々雄が京都で暗躍している事、その配下の戦力に関する事などが記されていた。
権兵衛は昔、情報屋から仕事を引き受けていた時期がありこう言った情報を集める事に関しては精通していた。
その為、斎藤の提供した志々雄の情報の大半は既に知り尽くしていたものだった。
志々雄は昔から人を斬る事に狂喜する奴だった。
自分が気に入らなければ仲間など関係なく斬り伏せる程で、藩からは警戒視されていた。
戦が終わり武士が刀を捨てたこの時代で志々雄が凡人として生きるなど到底出来ないだろう。
とりあえず自分の知っている志々雄に関する情報と新たに調べ集めた情報を斎藤に提供することをこの数週間、権兵衛は淡々とやっていた。
それからまた一週間が経った頃、情報提供の他にもいくつかの仕事を任される羽目になった。
「京都にいる間はどうもありがとうございました。的確な情報ばかりで驚きましたよ。お負けに他の雑用事まで引き受けて頂いて…。」
「お役に立てて何よりです。」
東京へと戻った斎藤からは微かに血の臭いがしていた。
志々雄やその一派の人間を相手に無傷で戻れる訳がないと予想はしていた。
「しかし情報収集もお得意だとは知りませんでした。署に籍を移されてからが楽しみですよ。」
「いいえ…、昔に少し齧った程度ですよ。」
今から変な期待を持たれても困ると権兵衛は頭を横に振って見せた。