弄ばれる猫
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
コイツは時々よくこのような事を口にする。
その─大丈夫─とは一体どう言う意味なのだろう。
─「自分の目で見極め引き抜いた人間だから。」か、
─「元長州の人間だから。」か、
縁日で出くわしたあの日。
休憩にと連れられた神社で本性を垣間見せた藤田だったが、未だに権兵衛に対して外面で接して先刻のような事を言う辺り、権兵衛の方からボロが出るのを待っているのか、本当に人違いだったと思っているのか…。
どっちにしてもこの男に昔の話をする気はない為、権兵衛は「自分の目で見極め引き抜いた人間」を演じる事にした。
「では東京の方はお任せしますのでよろしくお願いします。」
「はい。お気をつけて。」
帰り掛け邸の入り口で挨拶程度の言葉を交わすと一度背を向けた藤田が再び振り返った。
「あぁ…言い忘れていましたが、今回の件には"緋村抜刀斎"さんも協力されています。」
久しい名だなと思った権兵衛だが顔色一つ変えずに藤田に言葉を返した。
「その方は東京にいらっしゃるんですか。」
「お会いになったことは?」
「いいえ。昔に噂で聞いたことくらいしか…、本当にいらっしゃったんですね。」
緋村とは同じ釜の飯を食った仲だ。
藩に居た頃は何度か行動を共にしていたし、お互いまだ子供で年も近かった故兄弟のように過ごしていた程だ。
(─コイツ…、やっぱり気付いているのかもしれない。)
だがこちらから正体をバラす気は毛頭ない権兵衛はしらを切り通した。
「そうでしたか。なら今回の件が解決したらお会いになられては?」
「そうですね。噂に名高い剣客さん…一度お会いしてみたいです。」
募る話も有り余っているし是非会いたいと権兵衛は内心呟いた。
その時にでも斎藤に正体がバレぬよう緋村に口裏を合わせるよう頼んでおこう。