狼に目をつけられた猫
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「やはり広いお屋敷ですな。」
「いやいや、友人の中でも一番小さな屋敷ですよ。」
長い廊下を大西と川路の二人が歩いて行く。
その後ろを藤田と権兵衛が肩を並べながら、死角になりそうな場所を探し歩いている。
「大西様はとてもお人柄のいい方ですねぇ。その上等な着物といい、とても良くして頂いているんですねぇ。」
「えぇ…、まぁ。」
間を置いて藤田が話を掛けるが、権兵衛はその全てに素っ気なく返事を返す。
何気ない会話だがやはり藤田のあの視線が権兵衛を射抜いている。
藤田へ目を向けずとも剥き出しのその妖しい視線に気付いている権兵衛はそれに気付かない振りをし、ずっと前を向いたまま藤田の方へ顔を向けるどころかその素振りすら見せない。
(頼むから話し掛けんな…。)
権兵衛は内心そう呟くと前を行く大西に声を掛けた。
「旦那様、私…他を見て参ります。」
「他?」
その声に大西は後ろを歩く権兵衛へ向き直った。
「屋敷には屋根裏や蔵もあります。そこへ侵入できるわずかな場所などがないかどうか調べて参ります。」
「そうですね。一通り屋敷を案内したら私達は応接室へ戻っていますから。」
「分かりました。」
そう頷き権兵衛は三人に頭を下げると廊下を引き返して行った。
怪しげな笑みを浮かべた藤田はそれを横目に見送る。
大西が再び廊下を進もうと前を向くと、
「…大西様。」
藤田が大西を呼び、前へと向き直っていた大西は再び後ろへ振り返った。
そこにはにこりと笑顔を浮かべた藤田がいた。
「…私もひとつ宜しいでしょうか?」
藤田は言った。