壬生浪との対峙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…しかし懐かしいですねぇ…。」
目の前に立つ藤田がゆっくりと話し出した。
「あの時も貴女はそうして御堂に腰掛けていて…、確かそのまま背中を倒して寝そべっていましたね。」
(…急に何の話をしているんだ…?)
そう思い権兵衛は藤田に視線を向けた。
相変わらず優しげに笑っている藤田だが、いつになく深い笑みに権兵衛は眉を潜めた。
「あの頃はまだまだ子供でしたね。だから飴など啣えているかと思っていましたが、今でもそうしているとは驚きました。好物だったのですね。」
「………。」
権兵衛は黙ったまま藤田の言葉を聞いている。
そして同時に頭を支配するのは昨夜の夢。
「それからあの剣速。大西邸の地下室で拝見した時は驚きました。昔の頃よりも更に腕を上げられたのではないですか?」
にこりと閉じられていた藤田の瞼が微かに開きそこから覗く黄金色の瞳。
その瞬間、藤田の姿と重なり見えるのは夢で見た新選組三番隊組長・斎藤一の姿。
(…コイツ…。)
「そしてその刀。幕末の頃幾度となく刀を交えたせいで嫌と言う程に覚えていますよ。確か峰に一つ傷がありましたよね?」
権兵衛は視線を刀へと移す。
そして微かに鋭さを含んだ目で再び藤田へと視線を向けた。
「久し振りだな、名無しの。」
そこに居たのは"壬生狼"斎藤一だった。
「…何の話をされてるんですか?」
そう口にした権兵衛は困った様に眉を下げ笑うと石段から腰を上げ袴に着いた塵を払った。
「私が藤田さんとお会いするのは今回の件が初めてですよ。」
そんなわけはない。
「他の誰かと勘違いされてませんか?」
権兵衛だって嫌と言うほどに覚えている。
斎藤と初めて刀を交えたあの日の事を。
右肩を斬られた仕返しに斎藤の腹を斬った事も。
あの日もこうして二人、神社で対峙していた。
「私は、貴方を知りません。」
だが自らの正体を教えてやるつもりはない権兵衛は敢えてシラを切って見せた。