壬生浪との対峙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あの後、権兵衛は藤田と共に縁日周辺の警備をし酒盛りで酔った客の喧嘩の取締り、不審者への職務質問など警官さながらの仕事までする羽目になった。
「どうです?我々警官の仕事は。」
人々で賑わう出店の影から不審者に目を光らせながら隣に立つ藤田が問うてきた。
「矢張り大変なお仕事ですね…。」
(…終始こうしてコイツと行動を共にするのは耐えられないな…。)
権兵衛の言う大変とはそれしかなかった。
「警備と言ってもすることは一つではないですからね。」
そう言って微笑む藤田の隣で問題はそこではないと言いたげな権兵衛は小さく息を吐いた。
「少し疲れてしまいましたか?」
「あ…、いえ。」
聞こえないよう小さく吐いたつもりだったが藤田には聞こえてしまっていた様だ。
本当にこの男の側では一時も気が抜けないなと権兵衛は更に息を吐いた。
「少し休憩しましょうか。ここでは落ち着かないでしょうから、場所を変えましょう。」
いつ何時何処ででも寝入る事の出来る権兵衛には雑踏の声など大して気になるものでもない。
休憩ならすぐそこの木の上ででも十分と思っていたが、背中に添えた藤田の手に促され仕方なく場所を変えることにした。
「ここなら静かで風も良く通りますね。」
藤田が案内したのは縁日のすぐ側にある神社だった。
石段を登り切り着いた境内は藤田の言った通り、小高い場所故風が良く通って涼しく、縁日の賑わいも微かに耳に入る程度でとても過ごしやすい場所だった。
藤田は眼下に見える縁日を眺めており、その背後に建つ御堂の石段に腰を下ろしている権兵衛は目の前の背中に向かい口を開いた。
「すみません。何か気を使わせてしまったようで…。」
「いえ、いえ。とても助かりましたよ。あの様な喧嘩沙汰の場合複数の人間を私一人で取締まらなければならないので。名無しのさんのお陰で取締りも早く済みました。」
振り返りそう言った藤田は先刻よりも深い笑みを浮かべていた。