壬生浪との対峙
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「貴女との契約もそろそろ切れる頃ですし最後くらいいい思い出の一つでも作っておこうと思いましてね。」
「何ですか、それ…。今生の別れじゃあるまいし。警視庁はここから馬車で5分ですよ。」
権兵衛が警視庁へ籍を移したところで互いに会おうと思えばいつでも会いに行ける距離しか離れてはいないのだ。
「風情のない人ですねぇ…。会える事は会えるでしょうが、こうして貴女と暮らす事も無くなってしまうんですから。」
ふと感慨深い表情をした大西に権兵衛は目を丸くした。
どうやら権兵衛の想像していた以上に大西は寂しさを感じている様だった。
「別に警官になったとしてもアタシと旦那様の関係は変わりませんよ。警官が守るのはこの町の秩序と治安、そして住民です。その中に旦那様だって含まれてるんですから。今まで通りアタシが旦那様を守る事に変わりはないですよ。」
「まぁ、論理的に言えばそうですね。」
慰めているつもりで言った言葉でさえ大西はどこか虚無感を感じている様だ。
珍しく威勢のない大西に権兵衛はこの人でもこんなに滅入るものなのかと不謹慎ながら感心を覚えていた。
「じゃあ、アタシが警官の職に飽きた時はまたここで雇って下さい。今のアタシには旦那様のお側しか帰る場所がないんですから。」
そう口にした権兵衛は朝食を食べ終えると側に控えていたハウスメイドに合図をし引いてきたカートへ皿を片付けた。
それを見詰めながら先刻の権兵衛の発言が余程意外なものだったのか大西は驚いた様に目を見開いていた。
権兵衛は何気なく言った言葉なのだろ。
大して気にした風もなく呑気に食後の棒付き飴を口にしていた。
「警視庁へ行けとおっしゃったのは旦那様ですよ。アタシは旦那様が反対されれば行くつもりもなかったんですから。今更そんな寂しそうな顔なさらないで下さい。」
大西の意に従い藤田の引き抜きを承諾した権兵衛。
あの日自ら口にした思いに嘘はなかった大西だが、いざ権兵衛との契約の期限が近付いてくると下した決断に間違いはなかったのかと思案してしまっていた。