狼に目をつけられた猫
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応接室へと入るとテーブルを挟んで対面している三人掛けのソファーに男が二人座っていた。
「お待たせしてすみません。」
「いいえ。この度はこちらの申し出にご足労を頂きまして有り難う御座います。」
背の低い男が大西の言葉に礼を返した。
男の名は川路と言った。
「そちらの方が?」
大西が川路の隣の男を見た。
すると男は被っていた警察帽を取り頭を下げた。
「はじめまして。今回現場の指揮を執る藤田五郎と申します。」
藤田と名乗る長身の男は如何にも人の良さそうな笑みを浮かべ二人と挨拶を交わした。
「そちらの方が食客の?」
「えぇ。二年程前から私の下で働いて貰っています。」
「名無しの権兵衛と申します。」
権兵衛も頭を下げ藤田、川路と挨拶を交わした。
「女性の食客とは珍しいですね。」
「いろいろな友人に言われますよ。ですが彼女は剣術と体術に長けた方でしてねぇ…、実際食客を雇う際に数名の立候補者の中で抜きん出た強さでしたから。」
「それは頼もしいですねぇ…。」
笑みを浮かべたままそう呟いた藤田が権兵衛へ視線を移した。
権兵衛はそれに少し目を見開いた。
にこりと閉じられていた目が微かに開き、怪しい瞳が此方を見ていたからだ。
たがそれもほんの一瞬で藤田はまたにこりと目を閉じ笑みを向けた。
(…なんだ?)
権兵衛は少しだけ顔を歪め、着物越しに自分の右腕に触れた。
藤田と目が合った一瞬。
権兵衛の右腕の古傷が疼いた。
「期待していますから、ご協力よろしくお願いします。」
「はい…、こちらこそ。」
権兵衛は藤田の先刻の怪しい雰囲気に疑念を抱いた。
と言うよりも、あの雰囲気の人間に昔遭ったような覚えがある。
とにかく居心地が悪いのは確かだった。
快く協力には応じたがあまり関わらないようにしようと権兵衛はこの時思った。