壬生浪との対峙
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─遠くから微かに聞こえてくる叫び声。
─夜風に乗り鼻を突くのは血の臭い。
今し方絶命した人間のものだろう。
とある山間の神社の境内に立つ権兵衛。
その右肩の着物は線を引いた様に斬られておりそこから覗く腕には血が滲んでいる。
だがそんな事には目もくれず権兵衛は目の前を見詰めていた。
そこには浅葱色の段だら模様の着物を着た長身の男。
長髪を高く結い上げており、垂れた前髪が微かに額を隠している。
そして狼の名に相応しい黄金色の鋭い眼で権兵衛を射抜いていた。
男の名は、
─新選組三番隊組長・斎藤一。
目の前の斎藤は実に愉快だと言わんばかりに不敵に笑っていた。
─深夜、2:08。
大西邸の1階の廊下の奥から2つ目の部屋。
邸内の人間達が寝静まっている中、その部屋の寝台で今し方目を覚ました権兵衛は熱帯夜でもない今宵に額と胸元にべたりと汗をかいていた。
目を覚ました理由と言えば、先刻の夢。
夢ではあるが正確には幕末の頃の記憶の一部である。
志士の頃に何度も刀を交えてきた斎藤一。
その斎藤と初めて対峙した時の記憶だ。
「…夢にまで出てくんなよ…。」
権兵衛は気怠そうに呟き額の汗を拭うと布団を蹴飛ばした。
そして疲れた様に大きく息を吐く。
ここ連日見たくもない顔を夢でまで見る羽目になってしまった事に権兵衛はとうとう自分の尽きの無さを恨み始めていた。
初めて斎藤と対峙したあの日。
それまで新選組の組長位の人間と刀を交えた事のなかった権兵衛は正直、斎藤の剣腕の高さに驚かされた。
これまで斬ってきた下級の新選組隊士とは明らかに違っていた。
新選組特有の"突き"の攻撃。
獣が牙を突きつける様なそれから、
─牙突─と言っていたか…。