狼の悪戯
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権兵衛は約束通り飴を買いに未だ買い物客でごった返している通りを大西に渡された小銭を手に行き着けの飴屋へと向かっていた。
骨董屋に用があると言った大西とはつい先刻別れたばかりで支えをなくした権兵衛は大西から借りたステッキを尽きながら未だ覚束無い足取りで通りを歩いていた。
「アタシを女として扱ってんならここまで手貸してくれればいいのに…。」
勝手にこんな格好をさせておいてあっさり手を離した大西を思い出し権兵衛はぼそりと小言を漏らした。
「名無しのさん?」
突如聞こえてきた声に権兵衛はギクリと肩を上げた。
「こんな所で…、お一人でお買い物ですか?」
そこには昨日なるだけ関わらない様にしようと決めた対象人物である斎藤一…もとい藤田五郎が立っていた。
相変わらずの羊顔を貼り付け権兵衛に声を掛けてきた藤田は警察帽を目深に被り腰に愛刀を携えていた。
「こんにちわ。」
権兵衛は今日も早々にツイていないと思いながらも無難な挨拶を返した。
「今日も見事なお着物ですね。良くお似合いですよ。」
「あ…、有り難う御座います…。」
望んではいない藤田の言葉に権兵衛は更に渋い顔で笑った。
ふと権兵衛の手元を見た藤田が首を傾げた。
「何故ステッキを?」
「履き慣れない草履を履いているせいで上手く歩けなくて…旦那様にお借りしたんです。」
「あぁ、大西様もご一緒なのですね。」
「藤田さんは巡回中ですか?」
「えぇ。この時間帯は私の担当なんですよ。」
「ご苦労様です。では、失礼します。」
少し冷たい気もしたがそんな事は関係ない。
兎に角権兵衛はこの男と関わり合いたくないのだ。
目的の飴屋はもうすぐそこだ。
権兵衛は藤田に軽く頭を下げ踵を返した。
「名無しのさん。」
背を向けた途端後ろ手に藤田に左の腕を掴まれた。