狼の悪戯
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「品良く笑う事も覚えられたら方がいいですねぇ…。」
隣を歩く権兵衛を見下ろしながら大西は呆れた様に呟いた。
当の権兵衛は着慣れない着物に履き慣れない草履のせいで先刻から浮かない顔だ。
その上少し高さのある草履が脚をふらつかせまともに歩けない。
その為権兵衛は大西の貸した右腕に掴まりながら小さな歩幅でちょこちょこと歩いている。
「28にもなって本気なんですか、それは?」
「仕様がないじゃないですか…。小さい頃から男に囲まれて竹刀ばかり振り回して育ったんですから。」
「ご両親は何も言わなかったのですか?」
「アタシのやりたい様にさせてくれてましたから。流石に正月と初詣くらいは着物でしたけど…。」
剣術道場の娘であった権兵衛は幼い頃から道場に通う門下生と共に過ごし育った。
当然の如く門下生は男ばかりで剣術事態男の武道である事すら知らなかった当時の権兵衛は、お手玉や毬の代わりに竹刀を握っているのが日常茶飯で門下生とよく稽古の真似事をして遊んでいた。
そんな権兵衛を父親は好きなようにさせていたし、母親も元気なのはいい事だと笑って見守ってくれていた。
「そのお陰で食客として貴女と出会えたというのがどこか皮肉ですね…、何だか笑えてきます。」
隣でクスクスと笑う大西は権兵衛に優しく微笑んだ。
「窮屈な思いをさせているお詫びに何か好きなものを買ってあげましょう。」
「飴がいいです。」
間髪入れずにそう答えた権兵衛に大西はぽかんとした表情を浮かべた。
「そんな物でいいんですか?」
「はい。好物なんです、飴。」
何か買ってやるの申し出に迷わずにそう答えた権兵衛は嬉しそうな顔で大西を見上げていた。
まるでその辺に何処にでも居る子供の様だ。