狼に目をつけられた猫
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「普段は貴女の我が儘を聞いてその格好を許しているんですから…こういう時くらいは私の方を優先させてもらいます。」
「実際に護衛をするとなったら袴が一番動きやすいんですよ~!!」
首根っこを掴まれたまま身長差のせいで爪先立ちの権兵衛はジタバタと抵抗するが、大西の意志は固いらしく離す気はないようだ。
「心配なさらずとも着付けならハウスメイドに任せていますから安心して脱がされて下さい。」
「…えっ?…いやっ、…あの、ちょっと…?!」
そうしている間に大西に呼ばれやって来たハウスメイドに両脇を抱えられ屋敷の中へと連れて行かれてしまった。
「思った通り、良く似合っているじゃないですか。」
「…そりゃあ…どうも…。」
権兵衛は心底うんざりだと言わんばかりにぼそりと呟いた。
ハウスメイドに着せられたら着物。
紺の着物に上品な刺繍の施された帯。
着物の裾には鮮やかな桜が描かれている。
本人にとっては不本意ではあるが完璧に着こなしてしまっていた。
「とても綺麗ですよ。出来れば毎日そうして頂きたいのですがね…。」
「アタシはもう脱ぎたいです…。それにこれじゃあ帯刀もできませんよ。」
権兵衛はがっちりと巻かれた帯を叩きながら呟いた。
「刀が無くとも貴女は体術にも長けているじゃないですか。」
「本領は前者の方ですから。」
そう言うと権兵衛は着物の裾を摘んだり、普段は履かない女物の草履が窮屈なのか頻りに足踏みを繰り返していた。
「どうしても気に入らない様ですね…。まぁ、暫くの辛抱ですから。」
突如部屋に扉をノックする音が。
扉が開くとハウスメイドが頭を下げ部屋へと入ってきた。
「失礼致します。旦那様、名無しの様…お客様がおいでになられました。応接室でお待ちいただいております。」
「あぁ、有り難う。では行きましょう。」
「……はぁい。」
げんなりと頭を垂れ権兵衛は大西と共に応接室へと向かった。