狼の悪戯
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大西の用意させた着物はやはりどれもかなり値の張る高級品だった。
「全て頂いても構わないのですよ。」と言い出した大西に権兵衛は慌てて首を振った。
折角自分の為にと大西が用意してくれた物を全て突き返す訳にもいかず権兵衛は割と落ち着いた色合いの紺の着物を一着頂くことにした。
「とても上品に見えますよ。よくお似合いです。」
「…では有り難く頂きます。」
やっと着せかえ人形の役から解放されると袴に着替える為権兵衛は帯を解こうとした。
「何をなさっているのですか?」
その手を大西に掴まれ征されるとそのまま腕を引かれ畳間から出るよう促された。
大西に手を引かれ畳間の入り口の土間まで連れて来られた権兵衛はふと視線を下げた。
「…は?」
権兵衛はぽつりと声を漏らした。
見るとそこに脱いで置いたはずのブーツがなく、代わりに可愛らしい女物の草履が置かれていた。
「どうしました?早く履いて下さい。次は貴女に合う簪(かんざし)を見に行きますから。」
「…ちょっと待って下さい!まさかこのまま表を歩けと仰るんですかっ…?!」
「当然でしょう。だから草履まで揃えて頂いたんですから。」
ブーツだけでなく着付ける際に姿見の前に置かれた籠に脱いであった袴も無くなってしまっていた。
「貴女の私物ならちゃんと私が預かっていますから心配いりませんよ。」
目の前でそう言って笑っている大西は腕に江戸紫の風呂敷を抱えていた。
「さぁ、早く行きますよ。」と急され権兵衛は諦めて草履を履くと大西と共に仕立屋を後にした。