狼の悪戯
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
社交界関係者絡みの事件の犯人逮捕の翌日。
予定通り権兵衛は大西と共に街へと買い物へ来ていた。
相変わらず大勢の買い物客で賑わいを見せている通りから少し外れにある一件の仕立屋。
「旦那様…本当にいいですから。」
その店内の奥から聞こえてくるのはうんざりした様な権兵衛の声。
「遠慮は無用ですよ。私からのささやかな贈り物なのですから。」
誇らしげにそう言う大西の目の前には店員によって着物を着付けられている権兵衛の姿。
日頃からこうして大西に付いて街に買い物に来る事はよくある。
今日も普段同様、大西の要り用な物を買いに来たのだろうと思っていた権兵衛に大西は街に向かう途中、馬車の中で言った。
『あの角の仕立屋まで付き合って下さい。』
仕立屋と言う言葉に権兵衛は反射的に身構えた。
昨日、無理矢理着物を着せられているだけに嫌な予感が頭を過る。
「…こんな高価な物でなくても結構ですよ。普段アタシは化粧だってろくにしないんですから。こういう上等な物はもっと品のある女性に贈ってあげて下さい…。」
店に入ると思った通り。
大西によって話を通されていた店員によって権兵衛は店の奥の畳間へと案内された。
そして如何にも上等そうな着物を先刻からとっかえひっかえ着せられていた。
「何を言っているのですか。貴女の新しい門出を飾る物なのですから、安価な物であっては芸がないでしょう。」
警視庁へ引き抜きが決まった権兵衛への祝いの品として大西は着物を何着か仕立てて貰っていた様だ。
しかし引き抜きが決まったのは昨日の話。
藤田が帰ったあの後に仕立屋に連絡を走らせたところでたった一晩の間にこんな上等な着物を何着も仕立てられる訳はない。
「でもこんなに沢山の着物どうやって?」
「それらは全て前々から仕立てて頂いていた物です。貴女ももういい歳なんですから良い着物くらい持っていなければいけませんよ。」
「それにしては…上等すぎませんか?」
「えぇ、かなり上質な生地を使っていますから大事にして下さいね。」