狼に目をつけられた猫
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「相手の間合いに入る速さも達人技でしたね。峰打ちも骨には当てずに内臓だけを打つ。相当な場数を踏んでいない限り出来ない事ですよ。」
いやに饒舌な藤田に権兵衛は眉を潜めた。
「全部見てらしたんですか?」
「失礼ながら貴女の腕を試させて頂きました。」
笑みを浮かべ小さく頷いて見せた藤田に権兵衛は先刻斬り伏せた男を見た。
「じゃあ、この男は…。」
「その男は正真正銘、大西様を狙っていた犯人です。貴女を試す為に我々は手出しせず、そのまま地下へ誘導させたんです。」
はっきりと言ってのけた藤田に権兵衛は信じられないと言った表情で呆然としていた。
「常々貴女の噂は耳にしていました。町外れの屋敷にかなり腕の立つ用心棒がいると…。貴女がどれ程の腕をお持ちなのか試したいと思っていた時に偶然大西様が標的に上がったのを恐れながら利用させて頂きました。」
「……。」
人の良さそうな笑みを浮かべる顔には似つかわしくない言葉をぬけぬけと言う藤田に権兵衛はもう開いた口が塞がらなかった。
そんな権兵衛を尻目に藤田は更に続けた。
「どうです?私の元でその手腕を活かしてはみませんか?」
「…え…?」
騙して刀を振るわせましたと言った後によく言えたなと権兵衛は内心呟いた。
そんな権兵衛に気付いていないのか、藤田はにこにこと権兵衛に笑顔を向けている。
「あの…何をおっしゃってるんですか?」
「そのままの意味ですよ。貴女に是非私の元へ来て頂きたい。貴女の腕を間近で見て来た大西様もそうは思いませんか?」
藤田の言葉に権兵衛は大西を見た。
大西は優しげな笑顔で権兵衛を見詰め口を開いた。