虹色トレイン
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彼女の姿が見えなくなると、風は止み、滅多に開かない出口の扉はバタンと音を立て固く閉ざされた。
扉の方をじっと見つめ、視線を自身の手のひらに落とす。
先ほどまで確かに固く繋いでいた手の温もりを思い出しながら、壁にそってずるずると座り込んだ。
いくつもの汗が額を伝い、ぽたりぽたりと床に落ちていく。
走馬灯のように駆け巡る自身の記憶の波にくらくらと眩暈を起こす。
どうやら、彼女がこの列車を離れる寸前に発した“ある名前”が引き金となり、徐々に長年忘れていた記憶が戻っていく。
しかし、その代償は思いのほか大きかった。
痛みと、熱さと、苦しさの中でもう自分の傍にはいない“最愛の彼女”のことを想った。
最初に違和感を感じたのは、名簿に記載された彼女の名前を見つけたときだった。
いつものように業務的にぺらぺらとバインダー上の紙面を流し見していたのだが、自然と彼女の名前のところで手が止まった。
あの時はこの違和感の正体に自身も気づいていなかったのだが、本能的に彼女が自分に関りのある人物だとわかっていたのかもしれない。
その違和感が確実なものに変わったのは、彼女と初めて対峙をした時。
ぼうっと窓の外を眺め、無気力な様子の彼女。
何を問いかけても周りの乗客と同じような反応を示す彼女と目が合った瞬間、得体のしれない衝撃が全身に走る。
それと同時にこみ上げてくる、何と表現したらいいのかわからない…切なさと愛しさが混ざり合ったような感情。
彼女をここで死なせるわけにはいかない、直感的にそう感じた。
彼女に何とか自分のことを思い出してもらおうと、名簿に記載されている“略歴“からほんの少しずつヒントを与えていった。
車両に乗客が増えるたびに、どこからともなく手元に増える摩訶不思議な名簿。
そこには乗客の名前や生年月日、事故に至るまでのその人物の“略歴”が記されている。
勿論“略歴”なので事細かい情報はのっていないが、ここに記されている情報を“返す”ことで乗客が本来の自分を取り戻すには充分すぎる情報量だ。
彼女は、俺から情報を少しずつ“返していく”ことで、徐々に本来の人間性を取り戻していった。
しかし、彼女が本来の自分に近づけば近づくほど、自身の身体にふりかかる“罰”は微弱なものから身体がふらつくほどの衝撃にまで大きくなっていった。
彼女に悟られないよう、ヒントを与えてはすぐに車両を出て壁に寄りかかる。
この時はまだ、少しの間身体を休めていれば何てことない程度の痛みだった。
これは、ここまで自身に与えられてきた微弱な衝撃は乗客に干渉しすぎであるという“警告”
壁に寄りかかって息を整えながら、自身の胸元に身に付けている装飾品に視線を落とす。
おそらく、この胸についている制御装置がなかったら間違いなく衝撃に耐えられなかっただろう。
エメラルド色の装飾が施された金色のブローチ。
乗客たちと業務上直接関わるのである程度声をかけたり質問を投げかけても“罰”がくだらないように制御されている。
とは言っても、このブローチが制御装置であることを知ったのはつい今しがただ。
車両内で倒れている彼女を椅子に寝かせ、自身の制服をかけて車掌室へと戻る途中のこと。
急にそれまでとは比べ物にならないほどの痛みと衝撃が全身に走る。
よろけた足でようやく車掌室までたどり着き、ネクタイを緩め楽な格好でソファに横になる。
痛みは、徐々に増していった。
「…っなんで…」
どうして急に痛みが強くなったのかわからないまま、腕を抱き込みただひたすらに耐えた。
しばらくして、車掌室の扉をノックする音が室内に響く。
この車両には自ら車掌を訪ねてくるような乗客はいないはずだとわかっていたので、あえて返事はせず警戒した。
するともう1度コンコンと小さく控えめにノックの音が響く。
「あの、えと…私、です」
扉の外から彼女の声が聞こえたような気がした。…幻聴だろうか。
慌ててソファから立ち上がり、扉を開ける。
視線に飛び込んできたのは紛れもない彼女で、俺が彼女にかけておいた制服を大切そうに持ったままぽつんと一人そこに立っていた。
「お前さん…ここまで来れたのか。一人で」
「…?はい。車掌さんの上着を返そうと思って来ました」
信じられない気持ちが強く、思わず無言で彼女から制服を受け取る。それと同時に、それまでの痛みがすっと消え去った。
不思議に思っていると、ブローチの装飾部分がじわじわと熱を持っていることに気がつく。
…もしかすると、こいつが何か力を働かせることで自身にふりかかる衝撃を抑え込んだり、彼女を迷わせることなくここまでたどり着かせたのかもしれない。
その後、彼女をこの列車から逃がすため真実を伝え、この列車で唯一出口が存在する先頭車両の方へと歩く。
一歩一歩近づいていくたびに、ぴりぴりと痺れるような刺激が全身に走っていたが、もうこの時の俺はすでに覚悟を決めていたので迷わず進む。
そして、唯一“外”へ出ることができる扉がある先頭車両にたどり着いた頃には、もう彼女に隠すことができないほど身体が限界を迎えていた。
ここまで与えられてきた痛みや衝撃が“警告”ならば、今乗客の一人の記憶を意図的に思い出させこの列車から逃がそうとしている俺に与えられているこの衝撃は紛れもない“罰”
「(酷い頭痛に…吐きそうやの…)」
がんがんと容赦なく音を立てながら波打つ頭痛とそれに伴う吐き気に何とか耐えている。
しかし、罰はそれだけでは終わらない。
「…か…っは」
突如襲う心臓を鷲掴みにされているような胸の痛み。
上手く酸素が肺に入っていかず、浅い呼吸を何度も何度も繰り返す。
指先を動かそうとするだけで全身に回る電流のような痛みと、心臓を鷲掴みにされているような痛みとでとうとう自身の身体を支えることさえできなくなり、床に這いつくばるように倒れこんだ。
いっそこのまま死なせてくれたらどれだけ楽か
そう思わざるを得ない壮絶な苦しみ。
それでも、俺は何一つ後悔はしていない。
彼女を生きて返してやることが出来、最期の最後で自分自身も取り戻すことが出来たのだ。
自分のことを何もかも忘れたままこの列車の車掌として永遠に存在していくより、ずっとましだった。
心残りなのは、最期にあいつに何も伝えてやれなかったことだろうか。
ふと女がこの列車から出る瞬間に発した言葉を思い出す。
『必ず探すから、だから待っていて…っ!』
俺のことを思い出してもいないのに彼女はどうやって探して見つけるというのだろう。
もし、
もしも、万に一つ俺が生きて帰れた時には俺から彼女を探しに行こう。
だから
「待っと、うせ…由紀」
すっと瞬間的に意識が遠のくのを感じた時には、視界はすでに闇に包まれていた。
ほんの僅かに何も見えないはずの空間に光が差す。
目を開けて確認しようにも、どうにも瞼が重たく言うことがきかない。
瞼に意識的に力を集中させると、徐々にゆっくりと明るい光が差し込む。
見慣れた天井、見慣れた景色、見慣れた香り。
意識も、ぼんやりしていたものが少しずつはっきりしてくる。
どうやら、ここは自宅の自室らしい。
あの列車で自分が意識を失った後何が起こったのかはわからないが、奇跡的にこちらに帰ってくることが出来たようだ。
先ほどまでの痛みや苦しさもなく、深く息を吸い、ようやく肺に酸素が入っていくのを感じた。
少し時間が経つと、首回りも動くようになってきたので視線を動かし、手足がきちんとついていることも確認する。
どれ一つとして足りない部位は無く、一先ず安心した。
ふと、テーブルの上に置かれていたカレンダーを見て思わず目を見張る。
今を表す日付が、俺が事故にあった日からおよそ1年半後を表示していた。
確かに、あの列車内で過ごした時間を考えればこれぐらいの年月が経っていたとしてもおかしくはない。
分かってはいたが、やはり実際に受ける精神的ショックは大きい。
ただ、この状況を全く予想していなかったわけでもなかったのでショックと混乱は時間が経てば解決するだろうと、だけは妙に冷静になれた。
幾分か時間が経った頃、お湯の入った桶とタオルを持った母親が部屋に入ってくるのが見えたので“よう“と一言声をかける。
俺の顔を見るなり目を見開き、その手に持っていた桶とタオルを床に落とし、こちらに駆け寄り勢いよく抱きしめた。
母親は涙と震えでしばらく会話はままならなかった。
この1年半、一向に目覚める様子の無い息子をどんな思いで看病していたのか、その辛さは計り知れない。
後日、両親に連れられて地元の総合病院へと向かった。
手足がまだ思うように動かず、タクシーで病院に到着すると医者と看護師が数人待機しており、すぐさま車椅子へと乗せられる。
検査を行った結果、どこにも異常はなく後遺症も見当たらないと医者が両親に説明しており、極めて稀で奇跡的だと話をしていた。
ただやはり、1年半もの間身体を全く動かしていなかったので、日常生活に戻るには時間を有すること、リハビリが必要だという説明も同時に受けた。
医者が言うには、大変かもしれないが努力すればまた元の生活に戻ることができるそうだ。
早く自由に動けるようになって、由紀に会いに行きたい。その一心だった。
そういえば…俺が目覚めたことを彼女は聞いているのだろうか。
俺の携帯は事故の衝撃で壊れてしまったらしく、連絡手段がない。
明日になったら母親に聞いてみよう、そう思いながらその日は自室のベッドで深く目を閉じた。
扉の方をじっと見つめ、視線を自身の手のひらに落とす。
先ほどまで確かに固く繋いでいた手の温もりを思い出しながら、壁にそってずるずると座り込んだ。
いくつもの汗が額を伝い、ぽたりぽたりと床に落ちていく。
走馬灯のように駆け巡る自身の記憶の波にくらくらと眩暈を起こす。
どうやら、彼女がこの列車を離れる寸前に発した“ある名前”が引き金となり、徐々に長年忘れていた記憶が戻っていく。
しかし、その代償は思いのほか大きかった。
痛みと、熱さと、苦しさの中でもう自分の傍にはいない“最愛の彼女”のことを想った。
最初に違和感を感じたのは、名簿に記載された彼女の名前を見つけたときだった。
いつものように業務的にぺらぺらとバインダー上の紙面を流し見していたのだが、自然と彼女の名前のところで手が止まった。
あの時はこの違和感の正体に自身も気づいていなかったのだが、本能的に彼女が自分に関りのある人物だとわかっていたのかもしれない。
その違和感が確実なものに変わったのは、彼女と初めて対峙をした時。
ぼうっと窓の外を眺め、無気力な様子の彼女。
何を問いかけても周りの乗客と同じような反応を示す彼女と目が合った瞬間、得体のしれない衝撃が全身に走る。
それと同時にこみ上げてくる、何と表現したらいいのかわからない…切なさと愛しさが混ざり合ったような感情。
彼女をここで死なせるわけにはいかない、直感的にそう感じた。
彼女に何とか自分のことを思い出してもらおうと、名簿に記載されている“略歴“からほんの少しずつヒントを与えていった。
車両に乗客が増えるたびに、どこからともなく手元に増える摩訶不思議な名簿。
そこには乗客の名前や生年月日、事故に至るまでのその人物の“略歴”が記されている。
勿論“略歴”なので事細かい情報はのっていないが、ここに記されている情報を“返す”ことで乗客が本来の自分を取り戻すには充分すぎる情報量だ。
彼女は、俺から情報を少しずつ“返していく”ことで、徐々に本来の人間性を取り戻していった。
しかし、彼女が本来の自分に近づけば近づくほど、自身の身体にふりかかる“罰”は微弱なものから身体がふらつくほどの衝撃にまで大きくなっていった。
彼女に悟られないよう、ヒントを与えてはすぐに車両を出て壁に寄りかかる。
この時はまだ、少しの間身体を休めていれば何てことない程度の痛みだった。
これは、ここまで自身に与えられてきた微弱な衝撃は乗客に干渉しすぎであるという“警告”
壁に寄りかかって息を整えながら、自身の胸元に身に付けている装飾品に視線を落とす。
おそらく、この胸についている制御装置がなかったら間違いなく衝撃に耐えられなかっただろう。
エメラルド色の装飾が施された金色のブローチ。
乗客たちと業務上直接関わるのである程度声をかけたり質問を投げかけても“罰”がくだらないように制御されている。
とは言っても、このブローチが制御装置であることを知ったのはつい今しがただ。
車両内で倒れている彼女を椅子に寝かせ、自身の制服をかけて車掌室へと戻る途中のこと。
急にそれまでとは比べ物にならないほどの痛みと衝撃が全身に走る。
よろけた足でようやく車掌室までたどり着き、ネクタイを緩め楽な格好でソファに横になる。
痛みは、徐々に増していった。
「…っなんで…」
どうして急に痛みが強くなったのかわからないまま、腕を抱き込みただひたすらに耐えた。
しばらくして、車掌室の扉をノックする音が室内に響く。
この車両には自ら車掌を訪ねてくるような乗客はいないはずだとわかっていたので、あえて返事はせず警戒した。
するともう1度コンコンと小さく控えめにノックの音が響く。
「あの、えと…私、です」
扉の外から彼女の声が聞こえたような気がした。…幻聴だろうか。
慌ててソファから立ち上がり、扉を開ける。
視線に飛び込んできたのは紛れもない彼女で、俺が彼女にかけておいた制服を大切そうに持ったままぽつんと一人そこに立っていた。
「お前さん…ここまで来れたのか。一人で」
「…?はい。車掌さんの上着を返そうと思って来ました」
信じられない気持ちが強く、思わず無言で彼女から制服を受け取る。それと同時に、それまでの痛みがすっと消え去った。
不思議に思っていると、ブローチの装飾部分がじわじわと熱を持っていることに気がつく。
…もしかすると、こいつが何か力を働かせることで自身にふりかかる衝撃を抑え込んだり、彼女を迷わせることなくここまでたどり着かせたのかもしれない。
その後、彼女をこの列車から逃がすため真実を伝え、この列車で唯一出口が存在する先頭車両の方へと歩く。
一歩一歩近づいていくたびに、ぴりぴりと痺れるような刺激が全身に走っていたが、もうこの時の俺はすでに覚悟を決めていたので迷わず進む。
そして、唯一“外”へ出ることができる扉がある先頭車両にたどり着いた頃には、もう彼女に隠すことができないほど身体が限界を迎えていた。
ここまで与えられてきた痛みや衝撃が“警告”ならば、今乗客の一人の記憶を意図的に思い出させこの列車から逃がそうとしている俺に与えられているこの衝撃は紛れもない“罰”
「(酷い頭痛に…吐きそうやの…)」
がんがんと容赦なく音を立てながら波打つ頭痛とそれに伴う吐き気に何とか耐えている。
しかし、罰はそれだけでは終わらない。
「…か…っは」
突如襲う心臓を鷲掴みにされているような胸の痛み。
上手く酸素が肺に入っていかず、浅い呼吸を何度も何度も繰り返す。
指先を動かそうとするだけで全身に回る電流のような痛みと、心臓を鷲掴みにされているような痛みとでとうとう自身の身体を支えることさえできなくなり、床に這いつくばるように倒れこんだ。
いっそこのまま死なせてくれたらどれだけ楽か
そう思わざるを得ない壮絶な苦しみ。
それでも、俺は何一つ後悔はしていない。
彼女を生きて返してやることが出来、最期の最後で自分自身も取り戻すことが出来たのだ。
自分のことを何もかも忘れたままこの列車の車掌として永遠に存在していくより、ずっとましだった。
心残りなのは、最期にあいつに何も伝えてやれなかったことだろうか。
ふと女がこの列車から出る瞬間に発した言葉を思い出す。
『必ず探すから、だから待っていて…っ!』
俺のことを思い出してもいないのに彼女はどうやって探して見つけるというのだろう。
もし、
もしも、万に一つ俺が生きて帰れた時には俺から彼女を探しに行こう。
だから
「待っと、うせ…由紀」
すっと瞬間的に意識が遠のくのを感じた時には、視界はすでに闇に包まれていた。
ほんの僅かに何も見えないはずの空間に光が差す。
目を開けて確認しようにも、どうにも瞼が重たく言うことがきかない。
瞼に意識的に力を集中させると、徐々にゆっくりと明るい光が差し込む。
見慣れた天井、見慣れた景色、見慣れた香り。
意識も、ぼんやりしていたものが少しずつはっきりしてくる。
どうやら、ここは自宅の自室らしい。
あの列車で自分が意識を失った後何が起こったのかはわからないが、奇跡的にこちらに帰ってくることが出来たようだ。
先ほどまでの痛みや苦しさもなく、深く息を吸い、ようやく肺に酸素が入っていくのを感じた。
少し時間が経つと、首回りも動くようになってきたので視線を動かし、手足がきちんとついていることも確認する。
どれ一つとして足りない部位は無く、一先ず安心した。
ふと、テーブルの上に置かれていたカレンダーを見て思わず目を見張る。
今を表す日付が、俺が事故にあった日からおよそ1年半後を表示していた。
確かに、あの列車内で過ごした時間を考えればこれぐらいの年月が経っていたとしてもおかしくはない。
分かってはいたが、やはり実際に受ける精神的ショックは大きい。
ただ、この状況を全く予想していなかったわけでもなかったのでショックと混乱は時間が経てば解決するだろうと、だけは妙に冷静になれた。
幾分か時間が経った頃、お湯の入った桶とタオルを持った母親が部屋に入ってくるのが見えたので“よう“と一言声をかける。
俺の顔を見るなり目を見開き、その手に持っていた桶とタオルを床に落とし、こちらに駆け寄り勢いよく抱きしめた。
母親は涙と震えでしばらく会話はままならなかった。
この1年半、一向に目覚める様子の無い息子をどんな思いで看病していたのか、その辛さは計り知れない。
後日、両親に連れられて地元の総合病院へと向かった。
手足がまだ思うように動かず、タクシーで病院に到着すると医者と看護師が数人待機しており、すぐさま車椅子へと乗せられる。
検査を行った結果、どこにも異常はなく後遺症も見当たらないと医者が両親に説明しており、極めて稀で奇跡的だと話をしていた。
ただやはり、1年半もの間身体を全く動かしていなかったので、日常生活に戻るには時間を有すること、リハビリが必要だという説明も同時に受けた。
医者が言うには、大変かもしれないが努力すればまた元の生活に戻ることができるそうだ。
早く自由に動けるようになって、由紀に会いに行きたい。その一心だった。
そういえば…俺が目覚めたことを彼女は聞いているのだろうか。
俺の携帯は事故の衝撃で壊れてしまったらしく、連絡手段がない。
明日になったら母親に聞いてみよう、そう思いながらその日は自室のベッドで深く目を閉じた。