マニアックな彼女と普通の彼氏で5題
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突然だが、彼女とちょっとした喧嘩をした。
実はこれが付き合って初めての喧嘩。
元をたどれば原因は俺、ということになるのかもしれないが、彼女が全く無関係とは言えない気がする。
彼女が今はまっているというゲーム(いわゆるソシャゲと呼ばれるもの)で、一緒に遊びたいからと半ば無理やりインストールをさせられた。
彼女の方はそこそこやりこんでいるらしく、始めたばかりの俺のランクではまだ一緒に遊ぶことができないらしい。
よくよく考えれば今まであまり共通の趣味もなく過ごしてきた。ようやく一緒に出来る何かを見つけられた気がして嬉しくなり、授業の合間をぬってランク上げに勤しんでいた、そんなある日のことだ。
「ねえ、仁王君が今やってるそのゲーム***だよね?」
「そうじゃけど」
ゲームをプレイしていると、背後から突然クラスの女子たちに話しかけられる。
話を聞くとこのゲーム、どうやら今男女問わずクラス中で流行っているらしい。
今まで気づかなかったが、確かに周りをよく見ればこのゲームに関する会話があちらこちらで繰り広げられている。
「え、何。仁王もやってんの?ちょっと意外。あ、フレンド申請してもいい?」
「フレンド申請?」
「あ、いいよ俺やるから携帯貸して」
「私も私もー!一緒に遊ぼうよ!」
女子との会話を皮切りに、次々とクラスの連中が俺のアカウントにフレンド申請とやらをしていく。
最終的に俺の手元に携帯が戻って来た時には、クラスのほとんどの奴らがフレンドになっていた。
今まであまりクラスメイトと共通の会話もなく積極的に関わってもこなかったが、ゲーム1つで一気に周囲との距離が縮まるとは思ってもいなかった。
俺は、由紀と一緒に遊べるのなら正直周りはどうでもいいのだが、何となく嬉しそうに話すクラスの連中を無下には出来なかった。
と、ここまでは彼女も周知の事実。
いつものように彼女の家に行き、その日あった出来事を話すと雅治良かったねと笑って言った。
問題が起こったのはその後のことだ。
それまでの取っつきにくく少し話しにくい仁王君が、そのゲームをきっかけに『実は話しやすい仁王君』に印象ががらっと変わり、ゲームの話題に関係なく人が俺の周りに集まるようになった。
男子との距離感は特段それまでと変わらないが、大きく変わったのは女子たちだ。
休み時間になればよそのクラスからも人がやってきて俺の隣の席や、真向かいの席に座り、ゲームに関することだったり、全然関係の無い内容の会話をふってくる。
「あ、雅は…」
「仁王君!このステージなんだけど…」
由紀に話しかけようにも、連中に呼び止められ中々会話をする機会が無い。
「おい由紀…」
「仁王君ちょっといいー?」
1週間、そんな状態が続いた。
ようやく隙間時間を作り彼女の元に行った時には
「…あの子たちと仲良くしてればいいじゃない」
怒り心頭だった。
いや、確かに放置してしまっていたことは否めないし俺にも自覚がある。
だが別に俺からクラスの連中に話しかけているわけではないし、むしろ煩わしくさえ思っている。
それに、元を辿れば由紀がこのゲームをインストールさせたことで生み出したこの状況であるということで俺は少なからずストレスが溜まっていたのかもしれない。
「俺がクラスの連中と話すのがそんなに嫌か」
「そんなこと言ってない」
「あのな…仮にもクラスメイトに対して無碍な扱いは出来んじゃろ」
「私は…そんなことで怒ってるんじゃない!」
休み時間の学校の廊下に、彼女の声が響き渡る。
ぴりぴりとした空気に周囲は遠目から視線を俺たちに送る。
「…っ もういい」
俺に背を向けて走り去る彼女。
その瞳には薄ら涙が浮かんでいるように見えたが、俺は追いかけることが出来なかった。
彼女と話さないまま、さらに2週間が経った。
付き合って以来、こんなに会わないのも連絡をとらないことも初めてだった。
先日、彼女と喧嘩をしたが俺は追いかけることが出来なかったのだが今では少し後悔している。
何となく自分から折れることが出来ずにいるのだが、もうそろそろ我慢の限界だった。
自分の机でどうしたものかと頭を抱えているとふと、俺の前に影が落ちる。
「ねえ、この間廊下で話してた女子って仁王君の彼女?」
「…?」
休み時間、最近俺の周りによく集まるクラスメイトの女子が突然尋ねる。
「そうじゃけど…なんでそんなこと聞く」
いらいらしているところに不意に話しかけられたので思わず不機嫌さが入り混じった返事をしてしまったが、とくに気にもしていない様子だ。
思えば、由紀とは中学の時から付き合っていたので周知の事実だと勘違いしていたのだが
平日彼女はバイト、俺は部活であまり一緒に帰る機会は無かったし、学校でもどこぞのバカップルのようにイチャつくわけでもなかったので知らない奴は知らないかもしれない。
「この間喧嘩してるっぽく見えたから。…仁王君さ、最近話しやすい雰囲気になったって他のクラスの女の子たちの間で噂になってるの知ってる?」
「…いや、知らん」
「付き合って長いの?だったら、その彼女さんは面白くないって思ってるかもね」
その言葉の意味がどういうことかわからず首をかしげていると、これは私のおせっかいだけど…と切り出す。
「彼女さんはずっと前から仁王君の魅力に気づいていたんでしょ。なのに、話しやすい雰囲気になったからって急に寄り付こうとする子たちがたくさん出てきたら…腹立つよね。ずっと見て来た彼女としては」
もしかしなくても、由紀がこの間怒っていた原因はこのクラスメイトの言う通りなのだろうか。
「仁王君、彼女が何に対して怒ってるのかわかってなさそうだったから、ちょっとおせっかい焼いてみました」
顔の横で、どこかで見覚えのあるようなピースサインを俺に送るクラスメイト。
そういえばこの女、部活の練習帰りにたまにコート近くにいたような、とそこまで考えてようやく気づく。
「お前さん…ブン太の…」
「シクヨロ。部活中、仁王君が荒れてるって困ってたからさ。早いとこ彼女さんと仲直りしてきてくれないかな」
「…ブン太に、迷惑かけたと伝えておいてくれるか」
「うん。仲直り、出来るといいね」
今まで、チームメイトの彼女の存在にも気づかなかったとは、それだけ俺が周りに全く興味がなかった証拠。
端から見れば冷たい奴と思われるだろう。
中学の時は、さらに輪をかけて近寄りがたい雰囲気だったと思う。
由紀と出会うまでは。
由紀と出会って、彼女は初めから上辺じゃなく素直に本音で俺に話しかけてくれて、俺自身もそんな彼女に感化されて少しずつ柔らかくなっていくのが目に見えてわかった。
由紀が絶対にばれたくなかった秘密の趣味を知った時だって、それが原因で別れようなんて思わなかった。
むしろ、きらきらとした笑顔で嬉しそうに楽しそうに話すあいつのことをずっと見ていたいとさえ思った。
今回のことだって、以前の俺ならたかがゲーム一つでクラスの連中や他の奴らの中の俺に対する印象ががらっと変わるなんてありえなかっただろう。
きっと、彼女と過ごす時間が長くなるにつれて俺自身も変わり始めているのだ。
廊下を歩く見慣れた後ろ姿。
久しぶりに見るその姿に、俺は衝動的に手を伸ばした。
「由紀…っ!」
「雅、治…?」
後ろから彼女の身体に手を回し、自身の方に引き寄せる。
周りが大きくざわつくのを肌で感じていたが、今はそんなことどうでもよかった。
「俺は、周りがどれだけ寄ってこようとお前さんにしか興味はない。
上辺だけで寄ってくる奴らなんかもっと興味ない。
由紀さえいてくれればいい。だから、もしも今後また今回のようなことがあっても…俺だけを信じてほしい」
彼女を抱きしめる腕に力が入る。
腕の中にいる彼女の肩は震えていた。
「話しやすくなったからって手のひら返したように雅治のこと好きだとかいう子がいっぱい出てきて…雅治昔から何も変わってないのに…っ」
「うん」
「じゃあ今までの雅治のことは何だと思っていたの?何を見てたの?って考えたら無性にいらいらして…当たって…本当にごめんなさい」
「いいって。わかってるから」
きっと俺は、彼女とい続けることでこの先もっと人と上手く関われるようになっていくだろう。
彼女を悲しませることがまたあるかもしれない。
「俺の気持ちはそう簡単には動かん。本当の俺のことだって、お前さんさえ知ってくれていればそれでいい。だから、もう俺のことを気遣って泣かなくてもええ」
だからせめて、俺のために泣いてくれている彼女のことを少しでも安心させてあげたいとは思う。
「好いとおよ、由紀」
「…!」
はっきりと、周りにも聞こえるように発した俺の言葉は周囲をさらにざわつかせた。
今まで、頼まれても外では絶対に言ってこなかった言葉。
何も反応を示さない彼女の様子が気になり顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして口をぱくぱくと開けていた。
「こ…っ」
「こ?」
「これが世にいうリアル公開処刑…っ」
いつもの言動に急に戻り俺はがくっと肩を落とす。
でも、それはいつもの彼女に戻った証拠でもある。
「あのなあ…」
「でも、嬉しい。私も好きだよ雅治」
「…ん。知っとる」
でも、彼女がこうして安心できるのなら、不安になる度何度でも言ってあげたいと思う。
「なあ、由紀が不安なら俺このゲームアンインストールしてもええんじゃけど」
「え、何で?私と遊べなくなるよ」
「だって俺がクラスの連中と仲良くしてたらお前さんまた…」
「だから別にそれは気にしてないし、クラスメイトと仲良くするのはいいことだよ」
「…そうなのか?」
「うん(それにブンちゃんの彼女さんにしっかりその辺はガードしてもらってるから大丈夫…ていうのは黙っておこう)」
「…?何か言ったか?」
「ううん、何も。さ、雅治のクラスの子たちのおかげでランクも上がったことだし一緒に狩りに行くぞー!」
「(ま、楽しそうだからええか)」
実はこれが付き合って初めての喧嘩。
元をたどれば原因は俺、ということになるのかもしれないが、彼女が全く無関係とは言えない気がする。
彼女が今はまっているというゲーム(いわゆるソシャゲと呼ばれるもの)で、一緒に遊びたいからと半ば無理やりインストールをさせられた。
彼女の方はそこそこやりこんでいるらしく、始めたばかりの俺のランクではまだ一緒に遊ぶことができないらしい。
よくよく考えれば今まであまり共通の趣味もなく過ごしてきた。ようやく一緒に出来る何かを見つけられた気がして嬉しくなり、授業の合間をぬってランク上げに勤しんでいた、そんなある日のことだ。
「ねえ、仁王君が今やってるそのゲーム***だよね?」
「そうじゃけど」
ゲームをプレイしていると、背後から突然クラスの女子たちに話しかけられる。
話を聞くとこのゲーム、どうやら今男女問わずクラス中で流行っているらしい。
今まで気づかなかったが、確かに周りをよく見ればこのゲームに関する会話があちらこちらで繰り広げられている。
「え、何。仁王もやってんの?ちょっと意外。あ、フレンド申請してもいい?」
「フレンド申請?」
「あ、いいよ俺やるから携帯貸して」
「私も私もー!一緒に遊ぼうよ!」
女子との会話を皮切りに、次々とクラスの連中が俺のアカウントにフレンド申請とやらをしていく。
最終的に俺の手元に携帯が戻って来た時には、クラスのほとんどの奴らがフレンドになっていた。
今まであまりクラスメイトと共通の会話もなく積極的に関わってもこなかったが、ゲーム1つで一気に周囲との距離が縮まるとは思ってもいなかった。
俺は、由紀と一緒に遊べるのなら正直周りはどうでもいいのだが、何となく嬉しそうに話すクラスの連中を無下には出来なかった。
と、ここまでは彼女も周知の事実。
いつものように彼女の家に行き、その日あった出来事を話すと雅治良かったねと笑って言った。
問題が起こったのはその後のことだ。
それまでの取っつきにくく少し話しにくい仁王君が、そのゲームをきっかけに『実は話しやすい仁王君』に印象ががらっと変わり、ゲームの話題に関係なく人が俺の周りに集まるようになった。
男子との距離感は特段それまでと変わらないが、大きく変わったのは女子たちだ。
休み時間になればよそのクラスからも人がやってきて俺の隣の席や、真向かいの席に座り、ゲームに関することだったり、全然関係の無い内容の会話をふってくる。
「あ、雅は…」
「仁王君!このステージなんだけど…」
由紀に話しかけようにも、連中に呼び止められ中々会話をする機会が無い。
「おい由紀…」
「仁王君ちょっといいー?」
1週間、そんな状態が続いた。
ようやく隙間時間を作り彼女の元に行った時には
「…あの子たちと仲良くしてればいいじゃない」
怒り心頭だった。
いや、確かに放置してしまっていたことは否めないし俺にも自覚がある。
だが別に俺からクラスの連中に話しかけているわけではないし、むしろ煩わしくさえ思っている。
それに、元を辿れば由紀がこのゲームをインストールさせたことで生み出したこの状況であるということで俺は少なからずストレスが溜まっていたのかもしれない。
「俺がクラスの連中と話すのがそんなに嫌か」
「そんなこと言ってない」
「あのな…仮にもクラスメイトに対して無碍な扱いは出来んじゃろ」
「私は…そんなことで怒ってるんじゃない!」
休み時間の学校の廊下に、彼女の声が響き渡る。
ぴりぴりとした空気に周囲は遠目から視線を俺たちに送る。
「…っ もういい」
俺に背を向けて走り去る彼女。
その瞳には薄ら涙が浮かんでいるように見えたが、俺は追いかけることが出来なかった。
彼女と話さないまま、さらに2週間が経った。
付き合って以来、こんなに会わないのも連絡をとらないことも初めてだった。
先日、彼女と喧嘩をしたが俺は追いかけることが出来なかったのだが今では少し後悔している。
何となく自分から折れることが出来ずにいるのだが、もうそろそろ我慢の限界だった。
自分の机でどうしたものかと頭を抱えているとふと、俺の前に影が落ちる。
「ねえ、この間廊下で話してた女子って仁王君の彼女?」
「…?」
休み時間、最近俺の周りによく集まるクラスメイトの女子が突然尋ねる。
「そうじゃけど…なんでそんなこと聞く」
いらいらしているところに不意に話しかけられたので思わず不機嫌さが入り混じった返事をしてしまったが、とくに気にもしていない様子だ。
思えば、由紀とは中学の時から付き合っていたので周知の事実だと勘違いしていたのだが
平日彼女はバイト、俺は部活であまり一緒に帰る機会は無かったし、学校でもどこぞのバカップルのようにイチャつくわけでもなかったので知らない奴は知らないかもしれない。
「この間喧嘩してるっぽく見えたから。…仁王君さ、最近話しやすい雰囲気になったって他のクラスの女の子たちの間で噂になってるの知ってる?」
「…いや、知らん」
「付き合って長いの?だったら、その彼女さんは面白くないって思ってるかもね」
その言葉の意味がどういうことかわからず首をかしげていると、これは私のおせっかいだけど…と切り出す。
「彼女さんはずっと前から仁王君の魅力に気づいていたんでしょ。なのに、話しやすい雰囲気になったからって急に寄り付こうとする子たちがたくさん出てきたら…腹立つよね。ずっと見て来た彼女としては」
もしかしなくても、由紀がこの間怒っていた原因はこのクラスメイトの言う通りなのだろうか。
「仁王君、彼女が何に対して怒ってるのかわかってなさそうだったから、ちょっとおせっかい焼いてみました」
顔の横で、どこかで見覚えのあるようなピースサインを俺に送るクラスメイト。
そういえばこの女、部活の練習帰りにたまにコート近くにいたような、とそこまで考えてようやく気づく。
「お前さん…ブン太の…」
「シクヨロ。部活中、仁王君が荒れてるって困ってたからさ。早いとこ彼女さんと仲直りしてきてくれないかな」
「…ブン太に、迷惑かけたと伝えておいてくれるか」
「うん。仲直り、出来るといいね」
今まで、チームメイトの彼女の存在にも気づかなかったとは、それだけ俺が周りに全く興味がなかった証拠。
端から見れば冷たい奴と思われるだろう。
中学の時は、さらに輪をかけて近寄りがたい雰囲気だったと思う。
由紀と出会うまでは。
由紀と出会って、彼女は初めから上辺じゃなく素直に本音で俺に話しかけてくれて、俺自身もそんな彼女に感化されて少しずつ柔らかくなっていくのが目に見えてわかった。
由紀が絶対にばれたくなかった秘密の趣味を知った時だって、それが原因で別れようなんて思わなかった。
むしろ、きらきらとした笑顔で嬉しそうに楽しそうに話すあいつのことをずっと見ていたいとさえ思った。
今回のことだって、以前の俺ならたかがゲーム一つでクラスの連中や他の奴らの中の俺に対する印象ががらっと変わるなんてありえなかっただろう。
きっと、彼女と過ごす時間が長くなるにつれて俺自身も変わり始めているのだ。
廊下を歩く見慣れた後ろ姿。
久しぶりに見るその姿に、俺は衝動的に手を伸ばした。
「由紀…っ!」
「雅、治…?」
後ろから彼女の身体に手を回し、自身の方に引き寄せる。
周りが大きくざわつくのを肌で感じていたが、今はそんなことどうでもよかった。
「俺は、周りがどれだけ寄ってこようとお前さんにしか興味はない。
上辺だけで寄ってくる奴らなんかもっと興味ない。
由紀さえいてくれればいい。だから、もしも今後また今回のようなことがあっても…俺だけを信じてほしい」
彼女を抱きしめる腕に力が入る。
腕の中にいる彼女の肩は震えていた。
「話しやすくなったからって手のひら返したように雅治のこと好きだとかいう子がいっぱい出てきて…雅治昔から何も変わってないのに…っ」
「うん」
「じゃあ今までの雅治のことは何だと思っていたの?何を見てたの?って考えたら無性にいらいらして…当たって…本当にごめんなさい」
「いいって。わかってるから」
きっと俺は、彼女とい続けることでこの先もっと人と上手く関われるようになっていくだろう。
彼女を悲しませることがまたあるかもしれない。
「俺の気持ちはそう簡単には動かん。本当の俺のことだって、お前さんさえ知ってくれていればそれでいい。だから、もう俺のことを気遣って泣かなくてもええ」
だからせめて、俺のために泣いてくれている彼女のことを少しでも安心させてあげたいとは思う。
「好いとおよ、由紀」
「…!」
はっきりと、周りにも聞こえるように発した俺の言葉は周囲をさらにざわつかせた。
今まで、頼まれても外では絶対に言ってこなかった言葉。
何も反応を示さない彼女の様子が気になり顔を覗き込むと、顔を真っ赤にして口をぱくぱくと開けていた。
「こ…っ」
「こ?」
「これが世にいうリアル公開処刑…っ」
いつもの言動に急に戻り俺はがくっと肩を落とす。
でも、それはいつもの彼女に戻った証拠でもある。
「あのなあ…」
「でも、嬉しい。私も好きだよ雅治」
「…ん。知っとる」
でも、彼女がこうして安心できるのなら、不安になる度何度でも言ってあげたいと思う。
「なあ、由紀が不安なら俺このゲームアンインストールしてもええんじゃけど」
「え、何で?私と遊べなくなるよ」
「だって俺がクラスの連中と仲良くしてたらお前さんまた…」
「だから別にそれは気にしてないし、クラスメイトと仲良くするのはいいことだよ」
「…そうなのか?」
「うん(それにブンちゃんの彼女さんにしっかりその辺はガードしてもらってるから大丈夫…ていうのは黙っておこう)」
「…?何か言ったか?」
「ううん、何も。さ、雅治のクラスの子たちのおかげでランクも上がったことだし一緒に狩りに行くぞー!」
「(ま、楽しそうだからええか)」
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