好き!の伝え方6題
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「え、ごめん。それ要らない」
この世に、俺からの贈り物の受け取りを拒否する女がいるなんて、脳天から稲妻が走るほどの衝撃を感じた。
「くそ、あの女また拒否しやがった」
部室でユニフォームに袖を通しながら、思わず今朝の出来事を思い出してしまい愚痴が漏れた。
隣で聞いていた忍足は、あぁーと少し考えた様子で口を開く。
「それ、お前のクラスにおる神崎さんのことやろ」
「待て。どうしてお前が知ってやがる」
その名を聞くだけで胸がざわつく。
それより、こいつがどうしてあの女と俺のことを知っているのかということの方が気にかかった。
「あの跡部様からの贈り物を何度も拒否するなんてあの女は一体何者や?って学校中の噂になってんで。知らんのはお前だけや」
そこまで噂になってるとは思っていなかったが、でもそれくらい珍しいということなのだ。あの女の行動や言動は。
「彼女、確かいいとこ出のお嬢さんやったと思うんやけど、お前やその周りの女らみたいに派手派手しくないっちゅうか、まぁそういうところが新鮮でな。実は陰で男子の支持高いの知らんやろ」
変わった女だとは常々思ってはいたが、それよりも俺は忍足の最後の方にさらっと言ったことの方が気になっていた。
「あの女がか?」
見た目は、派手か地味かと聞かれれば地味かもしれない。
でも確かに、それでいて清楚さがあり、育ちのよさも感じる。
そして、俺に対するあの毅然とした態度。
ばしゃっ
「え」
「…あ」
あの女との出会いは2週間前。
俺が手に持って歩いていた缶ジュースの中身が、ぶつかった際にクラスメイトの女子の制服を汚してしまった。
「あぁ…これでクリーニングにでも出してくれ」
そいつはただ教室の外の窓辺に立っていただけだったので過失は前方不注意で俺にあった。
詫びのつもりで慣れた流れで財布からすっと一万円札を渡すと、あの女はまるでそのへんのゴミを見るかのような視線を俺に送った。
「私の不注意でもあるし、お金は要らないわ」
衝撃だった。
俺はそれまでの人生、受け取り拒否を経験したことは一度もなかったし、あんな蔑んだ目で睨まれたのも初めての経験だった。
俺の周りにいた女共とは明らかに違う反応をするのが新鮮で、最初は興味本意だった。
お金を受け取らないのであれば何か物ならと渡したところ、これも受け取り拒否。
そんな高価なものは頂けないと。
じゃあ何なら受け取ってくれるのか
どんな物なら喜ぶのか
次第にあの女のことを考えながら贈り物を選ぶことが、少し楽しく感じてきている自分がいた。
「跡部、それってお前」
「あん?なんだよ」
「いや、えぇわ。それより、あの子はきっとお前に何か物を買ってほしいんちゃうと思うで。彼女、自分が制服を汚してもうたことちゃんと謝ってほしいだけ違う?贈り物はそれからやないの」
本当に、それだけなのか。
物でも金でもなく、謝罪の言葉がほしいだなんてそんなこと言う奴、俺の周りには一人もいたことがなかった。
部室の時計を見ると、時刻はまだ16時前。
今ならまだ教室に残っているかもしれない。
「忍足、悪いが…」
「行ってきいや」
ぽん、と忍足に背中を押され教室へと急ぐ。
早く、真実を確かめたかった。
がらりと勢いよく教室の扉を開けると、まだ何人か残っており、その中にあの女もいたがこちらを意図的に見ようともしない。
俺は無言でずかずかと歩み寄る。
自分の目の前に立ちはだかる俺のことを、例により屑を見るかのような視線で見てくるが、構わず俺はこの間のことだけど…と切り出す。
「この間は、悪かったな制服汚しちまって。ちゃんと、謝ってなかったよな」
一瞬の沈黙。
呆気にとられながらも、その目はしっかりと俺を捉えている。
数秒後、彼女は目を細め初めて笑顔を見せた。
「うん、私こそちゃんと見てなくてごめんね跡部君」
胸の高鳴り。
何と表現したらいいかわからない感情の高ぶり。
この気持ちは何と呼べばいいのだろう。
「あ。でももう高価な物を贈ろうとしないで。受けとるこっちの方が気を遣うし。あと、物やお金で解決しようとするのも良くない。そんなんじゃろくな大人にならないよ」
急に立て続けに説教が始まったが、俺にしては珍しく怒りや苛立ちは感じなかった。
今まで他人から説教されるなど、耐え難い屈辱以外の何者でもなかったが、それはきっとこいつの価値観でもっと物事を見てみたいと俺が無意識に感じていたからだろう。
「だが、やはり何か詫びさせろ。このままじゃ俺様の気がすまない。あぁ、近々何か一緒に選びに行くっていうのはどうだ」
自然と誘いの言葉が出る。
勿論、お前が欲しいと思うもので、高くない手頃な物をな、と付け足して言えば彼女は一瞬驚いた表情を見せ少し考えたあと
「それなら…いいかな」
跡部君て意外と律儀なところあるんだね、とそう戸惑い混じりの笑顔で言った。
すでにこの時、彼女に落ちていたと俺が気づくのはまだ少し先の話。
この世に、俺からの贈り物の受け取りを拒否する女がいるなんて、脳天から稲妻が走るほどの衝撃を感じた。
「くそ、あの女また拒否しやがった」
部室でユニフォームに袖を通しながら、思わず今朝の出来事を思い出してしまい愚痴が漏れた。
隣で聞いていた忍足は、あぁーと少し考えた様子で口を開く。
「それ、お前のクラスにおる神崎さんのことやろ」
「待て。どうしてお前が知ってやがる」
その名を聞くだけで胸がざわつく。
それより、こいつがどうしてあの女と俺のことを知っているのかということの方が気にかかった。
「あの跡部様からの贈り物を何度も拒否するなんてあの女は一体何者や?って学校中の噂になってんで。知らんのはお前だけや」
そこまで噂になってるとは思っていなかったが、でもそれくらい珍しいということなのだ。あの女の行動や言動は。
「彼女、確かいいとこ出のお嬢さんやったと思うんやけど、お前やその周りの女らみたいに派手派手しくないっちゅうか、まぁそういうところが新鮮でな。実は陰で男子の支持高いの知らんやろ」
変わった女だとは常々思ってはいたが、それよりも俺は忍足の最後の方にさらっと言ったことの方が気になっていた。
「あの女がか?」
見た目は、派手か地味かと聞かれれば地味かもしれない。
でも確かに、それでいて清楚さがあり、育ちのよさも感じる。
そして、俺に対するあの毅然とした態度。
ばしゃっ
「え」
「…あ」
あの女との出会いは2週間前。
俺が手に持って歩いていた缶ジュースの中身が、ぶつかった際にクラスメイトの女子の制服を汚してしまった。
「あぁ…これでクリーニングにでも出してくれ」
そいつはただ教室の外の窓辺に立っていただけだったので過失は前方不注意で俺にあった。
詫びのつもりで慣れた流れで財布からすっと一万円札を渡すと、あの女はまるでそのへんのゴミを見るかのような視線を俺に送った。
「私の不注意でもあるし、お金は要らないわ」
衝撃だった。
俺はそれまでの人生、受け取り拒否を経験したことは一度もなかったし、あんな蔑んだ目で睨まれたのも初めての経験だった。
俺の周りにいた女共とは明らかに違う反応をするのが新鮮で、最初は興味本意だった。
お金を受け取らないのであれば何か物ならと渡したところ、これも受け取り拒否。
そんな高価なものは頂けないと。
じゃあ何なら受け取ってくれるのか
どんな物なら喜ぶのか
次第にあの女のことを考えながら贈り物を選ぶことが、少し楽しく感じてきている自分がいた。
「跡部、それってお前」
「あん?なんだよ」
「いや、えぇわ。それより、あの子はきっとお前に何か物を買ってほしいんちゃうと思うで。彼女、自分が制服を汚してもうたことちゃんと謝ってほしいだけ違う?贈り物はそれからやないの」
本当に、それだけなのか。
物でも金でもなく、謝罪の言葉がほしいだなんてそんなこと言う奴、俺の周りには一人もいたことがなかった。
部室の時計を見ると、時刻はまだ16時前。
今ならまだ教室に残っているかもしれない。
「忍足、悪いが…」
「行ってきいや」
ぽん、と忍足に背中を押され教室へと急ぐ。
早く、真実を確かめたかった。
がらりと勢いよく教室の扉を開けると、まだ何人か残っており、その中にあの女もいたがこちらを意図的に見ようともしない。
俺は無言でずかずかと歩み寄る。
自分の目の前に立ちはだかる俺のことを、例により屑を見るかのような視線で見てくるが、構わず俺はこの間のことだけど…と切り出す。
「この間は、悪かったな制服汚しちまって。ちゃんと、謝ってなかったよな」
一瞬の沈黙。
呆気にとられながらも、その目はしっかりと俺を捉えている。
数秒後、彼女は目を細め初めて笑顔を見せた。
「うん、私こそちゃんと見てなくてごめんね跡部君」
胸の高鳴り。
何と表現したらいいかわからない感情の高ぶり。
この気持ちは何と呼べばいいのだろう。
「あ。でももう高価な物を贈ろうとしないで。受けとるこっちの方が気を遣うし。あと、物やお金で解決しようとするのも良くない。そんなんじゃろくな大人にならないよ」
急に立て続けに説教が始まったが、俺にしては珍しく怒りや苛立ちは感じなかった。
今まで他人から説教されるなど、耐え難い屈辱以外の何者でもなかったが、それはきっとこいつの価値観でもっと物事を見てみたいと俺が無意識に感じていたからだろう。
「だが、やはり何か詫びさせろ。このままじゃ俺様の気がすまない。あぁ、近々何か一緒に選びに行くっていうのはどうだ」
自然と誘いの言葉が出る。
勿論、お前が欲しいと思うもので、高くない手頃な物をな、と付け足して言えば彼女は一瞬驚いた表情を見せ少し考えたあと
「それなら…いいかな」
跡部君て意外と律儀なところあるんだね、とそう戸惑い混じりの笑顔で言った。
すでにこの時、彼女に落ちていたと俺が気づくのはまだ少し先の話。