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三が日が明け、まだまだお正月気分も抜けきれていないこの時期に四天宝寺と立海大附属の親善試合が開催される。
先日、幼馴染から想いを告げられた日から1週間と少しが経っていた。
遠山君からは元旦の恒例挨拶や、私の体調を心配するような連絡がいくつも届いており素直に嬉しいと思ったが、返信しようとすると幼馴染との出来事がフラッシュバックし、罪悪感から返信をしようとしても自然に指が止まった。
幼馴染からは、あれから一度も連絡がきていない。
きっと、余計に私を追い詰めることをわかってて彼はあえて連絡をしてきていないのだと思う。
長年一緒にいたから、彼にはお見通しなのだろう。そんな彼の気持ちまでわかるくらい、たくさんの時間を一緒に過ごしてきた。
親善試合の日に先日の返事を聞かせてほしいと言われている。
この1週間と少し自分はどうするべきか考えた。
でもやはり私は彼の気持ちに応えることは出来なさそうだという結論に至った。
自分の中で彼は幼馴染であり、兄であり、家族。その気持ちに変わりはないしこれからも変わらない。
願わくば今までのような穏やかな関係が続けばいいと思うが、それは無理な話だろう。
彼の気持ちを知ってなお、今までと同じように接するなんてそれこそ彼にとって残酷以外の何者でもない。
試合の日に私の想いを告げればもう兄妹ではいられない、日に日に気は重たくなっていった。
1月5日、親善試合当日の早朝5時。
ふと眠りから目覚めると携帯のライトが点滅しているのがぼんやり見えた。
親善試合そのものに行くか、行かないべきかを悩んでるうちにそのメッセージに気づかずに眠ってしまっていたようだ。
霞む視界で画面で開くと、相手は自分の想い人の彼からで受信日時は昨日の夜。
私の体調を心配してくれていること、もし試合に来れるのであれば暖かい恰好をしていることが文面にあり、彼の優しさに心が温かくなる。
やっぱり私は遠山君のことが好きで、彼に会いたい、彼に触れたい、その気持ち一心で重い腰をあげる。
今日の試合に必ず行く旨を書いてメッセージを送信し、時間までもう少し眠りにつくことにした。
午前8時にセットしていた携帯のアラームがけたたましく部屋中に響き渡る。
アラームを止め、二度目の眠りから覚めると少し頭も気持ちもすっきりしているような気がした。
身支度を整えるため、ハンガーにかかっている制服を手に取る。
今日は休日ではあるが、やはり学校の敷地に入る以上当然だが制服を着用する。少し不思議な気分だ。
洗面所で顔を洗い、髪を整え、もう一度自室に戻る。
最後の仕上げにとアクセサリーボックスを開けると、彼にもらったブレスレットと幼馴染からもらったネックレスが顔を見せた。
一瞬、取り出そうとする手が躊躇したが、自身の覚悟の現れをしめすためブレスレットだけを手に取り身に付ける。
「…ごめんね」
置き去りになったネックレスはそのままボックスの中で静かに眠りにつく。
いつか何の戸惑いも躊躇もなくあなたを身に付けることができる日がくるそのときまで、大切にしまっておこう。
パタンと蓋を閉める音がやけに耳に響いた。
午前9時30分
彼に言われたとおりに防寒対策をしっかりとり、学校のテニスコート付近へたどり着く。
まだ距離はあるが、すでにざわざわと人の声が聞こえる。
「うわぁ…」
テニスコートにたどりつくと、うちの学校の生徒も多数いるがそれに負けないぐらい立海大附属の生徒が目立った。
ジャージを着ている男子が多いことからおそらく大半はレギュラーではないテニス部員。
女子生徒はジャージを着ている人が数十人いることからおそらくテニス部のマネージャーだろう。
さすが、王者立海大附属テニス部といったところだろうか。
レギュラー陣の姿は今のところ見えない。そのことに少しほっとしつつ、私は足早に自陣のチームの方へと向かった。
立海大附属のギャラリーも凄かったが、四天宝寺側のギャラリーの多さにも目を見張る。
とくに女子に至っては私と同じ制服を着用している人が目立つことから、純粋に応援のためにここに来ているのだろう。
コートの中でアップをしているレギュラー陣にすでに黄色い歓声が飛んでいる。
そんな雰囲気に尻込みしてしまい、少し後ろの方でなるべく目立たない位置を見つけてそっと見守ることに決めたのだが、一瞬でそのさりげない努力は打ち砕かれる。
「由紀!待っとったで!」
コートから離れた位置にいるにもかかわらず、私を見つけた彼は走ってこちらに向かってくる。
視線が一気に私に集まり周囲がざわつくも、そんなことはお構いなしに遠山君は私の傍に駆け寄って両手を握る。
彼に見つけてもらえたという嬉しさだけで、ここ数日のもやもやとした気持ちが薄らいでいくようだった。
「体調は大丈夫なんか?無理してへん?」
握られた手の力が強くなる。
本気で心配をしてくれていたのが伝わり申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、大丈夫だと伝えるとよかった、と満面の笑みで言うので私もつられて微笑んだ。
この笑顔に私が今どれだけ救われているのか彼は知らないだろう。
握られていた両手の片方が離れ、シャラリと身に付けていたブレスレットに触れる。
「これ、付けてきてくれたんやな」
嬉しそうにじっとブレスレットを見つめる彼。
「うん、約束だったも… …っ!」
おもむろに手首をほんの少し高く持ち上げられた直後、ちゅっと音を立ててブレスレットに口づける。
「と、遠山君…っ」
いつもと違う雰囲気の彼に胸の高鳴りが止まらない。
加えて何だかすごく恥ずかしいことをしている気分になり全身がぶわっと熱くなるのを感じる。
周囲にいた人たちも、普段そういうことを絶対にしなさそうな彼の行動に驚きの様子を見せている。
「少しは、期待してもええってことやな」
にっと悪戯に笑う彼の唇から直接手首に伝わる熱と振動。
期待の意味も少しわかり始めていた私はあまりの恥ずかしさに言葉も発せず倒れそうになっていた。
「ひゅ~、金ちゃんもなかなか見せつけてくれるバイ」
「はは、彼女の方は今にも死にそうになっとるけどな。かわいそうに」
恥ずかしさと緊張と動揺とで、ハハハとからかい半分で盛り上がるギャラリーの声も全く聞こえていない。
「ワイ絶対勝つから。遠くからやのうて、近くで見とってや」
それでも彼の声だけは鮮明に耳に届く。
「うん、頑張ってね」
そんな私たちの光景を遠くから見つめている視線の存在に、この時の私たちは気づいていなかった。
先日、幼馴染から想いを告げられた日から1週間と少しが経っていた。
遠山君からは元旦の恒例挨拶や、私の体調を心配するような連絡がいくつも届いており素直に嬉しいと思ったが、返信しようとすると幼馴染との出来事がフラッシュバックし、罪悪感から返信をしようとしても自然に指が止まった。
幼馴染からは、あれから一度も連絡がきていない。
きっと、余計に私を追い詰めることをわかってて彼はあえて連絡をしてきていないのだと思う。
長年一緒にいたから、彼にはお見通しなのだろう。そんな彼の気持ちまでわかるくらい、たくさんの時間を一緒に過ごしてきた。
親善試合の日に先日の返事を聞かせてほしいと言われている。
この1週間と少し自分はどうするべきか考えた。
でもやはり私は彼の気持ちに応えることは出来なさそうだという結論に至った。
自分の中で彼は幼馴染であり、兄であり、家族。その気持ちに変わりはないしこれからも変わらない。
願わくば今までのような穏やかな関係が続けばいいと思うが、それは無理な話だろう。
彼の気持ちを知ってなお、今までと同じように接するなんてそれこそ彼にとって残酷以外の何者でもない。
試合の日に私の想いを告げればもう兄妹ではいられない、日に日に気は重たくなっていった。
1月5日、親善試合当日の早朝5時。
ふと眠りから目覚めると携帯のライトが点滅しているのがぼんやり見えた。
親善試合そのものに行くか、行かないべきかを悩んでるうちにそのメッセージに気づかずに眠ってしまっていたようだ。
霞む視界で画面で開くと、相手は自分の想い人の彼からで受信日時は昨日の夜。
私の体調を心配してくれていること、もし試合に来れるのであれば暖かい恰好をしていることが文面にあり、彼の優しさに心が温かくなる。
やっぱり私は遠山君のことが好きで、彼に会いたい、彼に触れたい、その気持ち一心で重い腰をあげる。
今日の試合に必ず行く旨を書いてメッセージを送信し、時間までもう少し眠りにつくことにした。
午前8時にセットしていた携帯のアラームがけたたましく部屋中に響き渡る。
アラームを止め、二度目の眠りから覚めると少し頭も気持ちもすっきりしているような気がした。
身支度を整えるため、ハンガーにかかっている制服を手に取る。
今日は休日ではあるが、やはり学校の敷地に入る以上当然だが制服を着用する。少し不思議な気分だ。
洗面所で顔を洗い、髪を整え、もう一度自室に戻る。
最後の仕上げにとアクセサリーボックスを開けると、彼にもらったブレスレットと幼馴染からもらったネックレスが顔を見せた。
一瞬、取り出そうとする手が躊躇したが、自身の覚悟の現れをしめすためブレスレットだけを手に取り身に付ける。
「…ごめんね」
置き去りになったネックレスはそのままボックスの中で静かに眠りにつく。
いつか何の戸惑いも躊躇もなくあなたを身に付けることができる日がくるそのときまで、大切にしまっておこう。
パタンと蓋を閉める音がやけに耳に響いた。
午前9時30分
彼に言われたとおりに防寒対策をしっかりとり、学校のテニスコート付近へたどり着く。
まだ距離はあるが、すでにざわざわと人の声が聞こえる。
「うわぁ…」
テニスコートにたどりつくと、うちの学校の生徒も多数いるがそれに負けないぐらい立海大附属の生徒が目立った。
ジャージを着ている男子が多いことからおそらく大半はレギュラーではないテニス部員。
女子生徒はジャージを着ている人が数十人いることからおそらくテニス部のマネージャーだろう。
さすが、王者立海大附属テニス部といったところだろうか。
レギュラー陣の姿は今のところ見えない。そのことに少しほっとしつつ、私は足早に自陣のチームの方へと向かった。
立海大附属のギャラリーも凄かったが、四天宝寺側のギャラリーの多さにも目を見張る。
とくに女子に至っては私と同じ制服を着用している人が目立つことから、純粋に応援のためにここに来ているのだろう。
コートの中でアップをしているレギュラー陣にすでに黄色い歓声が飛んでいる。
そんな雰囲気に尻込みしてしまい、少し後ろの方でなるべく目立たない位置を見つけてそっと見守ることに決めたのだが、一瞬でそのさりげない努力は打ち砕かれる。
「由紀!待っとったで!」
コートから離れた位置にいるにもかかわらず、私を見つけた彼は走ってこちらに向かってくる。
視線が一気に私に集まり周囲がざわつくも、そんなことはお構いなしに遠山君は私の傍に駆け寄って両手を握る。
彼に見つけてもらえたという嬉しさだけで、ここ数日のもやもやとした気持ちが薄らいでいくようだった。
「体調は大丈夫なんか?無理してへん?」
握られた手の力が強くなる。
本気で心配をしてくれていたのが伝わり申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、大丈夫だと伝えるとよかった、と満面の笑みで言うので私もつられて微笑んだ。
この笑顔に私が今どれだけ救われているのか彼は知らないだろう。
握られていた両手の片方が離れ、シャラリと身に付けていたブレスレットに触れる。
「これ、付けてきてくれたんやな」
嬉しそうにじっとブレスレットを見つめる彼。
「うん、約束だったも… …っ!」
おもむろに手首をほんの少し高く持ち上げられた直後、ちゅっと音を立ててブレスレットに口づける。
「と、遠山君…っ」
いつもと違う雰囲気の彼に胸の高鳴りが止まらない。
加えて何だかすごく恥ずかしいことをしている気分になり全身がぶわっと熱くなるのを感じる。
周囲にいた人たちも、普段そういうことを絶対にしなさそうな彼の行動に驚きの様子を見せている。
「少しは、期待してもええってことやな」
にっと悪戯に笑う彼の唇から直接手首に伝わる熱と振動。
期待の意味も少しわかり始めていた私はあまりの恥ずかしさに言葉も発せず倒れそうになっていた。
「ひゅ~、金ちゃんもなかなか見せつけてくれるバイ」
「はは、彼女の方は今にも死にそうになっとるけどな。かわいそうに」
恥ずかしさと緊張と動揺とで、ハハハとからかい半分で盛り上がるギャラリーの声も全く聞こえていない。
「ワイ絶対勝つから。遠くからやのうて、近くで見とってや」
それでも彼の声だけは鮮明に耳に届く。
「うん、頑張ってね」
そんな私たちの光景を遠くから見つめている視線の存在に、この時の私たちは気づいていなかった。