トラファルガー・ローに、拾われました。
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グランドラインのとある島。ここは次の島へ指すログポースの途中にある小さな島で、旅人たちの中間地点とも呼ばれている。だが旅人の大部分は海賊たちを示し、治安は最高に悪い土地である。しかしその分裏世界の情報交換の場として栄えており、海賊トラファルガー・ローの一味も情報収集を兼ねて一時船を寄せていた。
「お帰り、キャプテン…うわっ、なんだよソレ…!」
「しっ…死んでんのか?」
船員が「ソレ」と呼んだものは、船長トラファルガー・ローが小脇に抱える、人の姿をした何か。それは子供と判断できるほどの大きさで、薄汚れた衣服を身にまとい、性別さえ見分けがつかないほどの状態であった。おまけに酷い臭気を放っており、我が船長は死体を拾ってきたのではないかと船員たちは思った。
「まだ息はある。ベポ!」
「アイアイ、キャプテン!」
呼ばれた白熊のベポは投げ渡されたソレを慌ててキャッチする。ソレはぐったりとした様子で意識はなく、酷い高熱だった。
「ソイツを風呂に入れたらオペ室に運んでこい。今すぐだ」
言われ、ベポはただ事ではないと察し、真剣な表情でうなづいた。
――悪夢を見ていたようだ。
海賊相手の略奪に失敗し、酷い仕打ちを喰らった。もう二度と悪いことができないようにと、海賊は右手を切り取ってやるとこの細腕に剣を立てた。剣が骨まで達する前に気を失ってしまい、目が覚めたら途端、それが夢ではないことに気づくとパニックになって上体を起こす。
「わあっ!動いちゃダメだ!」
何かに体を押さえつけられ、組み倒された子供は血走った目で自身を押さえつける何かを見やり、それが大きな白熊であることがわかると更なるパニックを起こし、声にならない声をあげて抵抗しようと暴れる。
「ーー気が付いたか。死にかけにしちゃ元気だな」
押さえつけられた子供が声がした方へ視線だけを動かすと、自身を見下ろすトラファルガー・ローの姿を認識し、青ざめる。子供の瞳に畏怖の感情が浮かび、ローは意外そうに眉を上げた。
「俺を知ってるのか。ガキのくせに随分裏社会に精通してやがる」
そう言いながら、無理もないとローは思った。
この子供が三下の海賊に痛めつけられているところを救ったのは、他でもないロー本人だった。子供をリンチしていた海賊の言い分を聞いてやると、この子供が船に忍び行って宝を略奪しようとしていたためにとっ捕まえたとのことであった。
そう語った海賊は、ローの頭に記憶している主要な手配書リストにはない、彼にとっては箸にも棒にも引っかからない程度の海賊だった。この島にはそこそこ名の通った海賊船が停泊していたが、闇雲に略奪行為に及んだのではなく、あえてこのチンケな海賊団に目をつけたあたり、この子供は裏世界に詳しいことは容易に察せられた。
同業者の言い分には反論などないが、腕を切り落とすのはいかんせん過激であったため、逆に海賊をバラしてお宝もいただいてきたローだが、彼は海賊でありながら医者でもあり、放っておけば腕が壊死、最悪失血死しそうなこの子供を放っておけず、船に連れ帰った次第である。
そんなこんなで現在に至り、気絶している間に腕の裂傷を手当てしてやったわけだが、果たしてどうしたものかとローは頭を悩ませる。
「ここはどこだ!?私の服は!?はなせ、くまヤロウ!!」
目覚めた途端、暴れて手がつけられなくなった。ベポが頑張って傷に響かないように押さえつけてはいるが、どこで覚えてきたのか耳を塞ぎたくなるような暴言が子供の口から次々と飛び出し、ベポの精神的ダメージのほうが心配になる。
「お前の服なら捨てた。あんな汚ぇもん着てたら傷口から化膿して病気になるだろ」
汚い、と正面切って言われ、子供の顔にさっと赤が走る。怪我の状態を確認するために全身を診察したローだが、この子供は女の子であった。女の子にとって汚い、は禁句である。
「かっ…勝手なことするな!私は帰る…」
点滴を引っこ抜き、ベポを押し除けてベッドから降りようとした少女だったが、すっと血の気がひき、とても立てる状態ではなかった。
「極度の栄養不良に出血による貧血だ、立てるわけねぇだろ。大体、帰るったって、どこに帰るんだ」
言われ、少女は青白い顔をゆっくりとローへ向け、動揺で揺らめく瞳で睨みつける。
帰る家などないことくらい、ローには分かっていた。彼女が目覚めるまでの間に、船員たちで彼女の家を探した。でも、あの島のどこを探しても彼女の身寄りはなかった。
天涯孤独ーーその言葉が相応しいほどに、彼女があの島で生きていた形跡がなかった。
「ーーまあ、帰せと言われても無理だがな。ここはもう、海の上だ」
言われ、少女は絶句した。思った通り察しのいい子供で、自分がどんな状況に立たされているか栄養の足りていない頭でも瞬時に理解したのだろう。
トラファルガー・ローに、拾われました。
「わかったら大人しく寝てろ。口汚ぇガキは嫌いなんだ」
to be continude...
「お帰り、キャプテン…うわっ、なんだよソレ…!」
「しっ…死んでんのか?」
船員が「ソレ」と呼んだものは、船長トラファルガー・ローが小脇に抱える、人の姿をした何か。それは子供と判断できるほどの大きさで、薄汚れた衣服を身にまとい、性別さえ見分けがつかないほどの状態であった。おまけに酷い臭気を放っており、我が船長は死体を拾ってきたのではないかと船員たちは思った。
「まだ息はある。ベポ!」
「アイアイ、キャプテン!」
呼ばれた白熊のベポは投げ渡されたソレを慌ててキャッチする。ソレはぐったりとした様子で意識はなく、酷い高熱だった。
「ソイツを風呂に入れたらオペ室に運んでこい。今すぐだ」
言われ、ベポはただ事ではないと察し、真剣な表情でうなづいた。
――悪夢を見ていたようだ。
海賊相手の略奪に失敗し、酷い仕打ちを喰らった。もう二度と悪いことができないようにと、海賊は右手を切り取ってやるとこの細腕に剣を立てた。剣が骨まで達する前に気を失ってしまい、目が覚めたら途端、それが夢ではないことに気づくとパニックになって上体を起こす。
「わあっ!動いちゃダメだ!」
何かに体を押さえつけられ、組み倒された子供は血走った目で自身を押さえつける何かを見やり、それが大きな白熊であることがわかると更なるパニックを起こし、声にならない声をあげて抵抗しようと暴れる。
「ーー気が付いたか。死にかけにしちゃ元気だな」
押さえつけられた子供が声がした方へ視線だけを動かすと、自身を見下ろすトラファルガー・ローの姿を認識し、青ざめる。子供の瞳に畏怖の感情が浮かび、ローは意外そうに眉を上げた。
「俺を知ってるのか。ガキのくせに随分裏社会に精通してやがる」
そう言いながら、無理もないとローは思った。
この子供が三下の海賊に痛めつけられているところを救ったのは、他でもないロー本人だった。子供をリンチしていた海賊の言い分を聞いてやると、この子供が船に忍び行って宝を略奪しようとしていたためにとっ捕まえたとのことであった。
そう語った海賊は、ローの頭に記憶している主要な手配書リストにはない、彼にとっては箸にも棒にも引っかからない程度の海賊だった。この島にはそこそこ名の通った海賊船が停泊していたが、闇雲に略奪行為に及んだのではなく、あえてこのチンケな海賊団に目をつけたあたり、この子供は裏世界に詳しいことは容易に察せられた。
同業者の言い分には反論などないが、腕を切り落とすのはいかんせん過激であったため、逆に海賊をバラしてお宝もいただいてきたローだが、彼は海賊でありながら医者でもあり、放っておけば腕が壊死、最悪失血死しそうなこの子供を放っておけず、船に連れ帰った次第である。
そんなこんなで現在に至り、気絶している間に腕の裂傷を手当てしてやったわけだが、果たしてどうしたものかとローは頭を悩ませる。
「ここはどこだ!?私の服は!?はなせ、くまヤロウ!!」
目覚めた途端、暴れて手がつけられなくなった。ベポが頑張って傷に響かないように押さえつけてはいるが、どこで覚えてきたのか耳を塞ぎたくなるような暴言が子供の口から次々と飛び出し、ベポの精神的ダメージのほうが心配になる。
「お前の服なら捨てた。あんな汚ぇもん着てたら傷口から化膿して病気になるだろ」
汚い、と正面切って言われ、子供の顔にさっと赤が走る。怪我の状態を確認するために全身を診察したローだが、この子供は女の子であった。女の子にとって汚い、は禁句である。
「かっ…勝手なことするな!私は帰る…」
点滴を引っこ抜き、ベポを押し除けてベッドから降りようとした少女だったが、すっと血の気がひき、とても立てる状態ではなかった。
「極度の栄養不良に出血による貧血だ、立てるわけねぇだろ。大体、帰るったって、どこに帰るんだ」
言われ、少女は青白い顔をゆっくりとローへ向け、動揺で揺らめく瞳で睨みつける。
帰る家などないことくらい、ローには分かっていた。彼女が目覚めるまでの間に、船員たちで彼女の家を探した。でも、あの島のどこを探しても彼女の身寄りはなかった。
天涯孤独ーーその言葉が相応しいほどに、彼女があの島で生きていた形跡がなかった。
「ーーまあ、帰せと言われても無理だがな。ここはもう、海の上だ」
言われ、少女は絶句した。思った通り察しのいい子供で、自分がどんな状況に立たされているか栄養の足りていない頭でも瞬時に理解したのだろう。
トラファルガー・ローに、拾われました。
「わかったら大人しく寝てろ。口汚ぇガキは嫌いなんだ」
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