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君の血

人間は浅ましく愚かだ。
与えられた生に執着し、永遠の美を、若さを、巨万の富を、名声を。

……くだらない。

限りあるものだからこそ輝いているのだ。命は。
理解できないとばかりに深いため息をひとつ。それはお互い様かと……。
永遠を生きる吸血鬼である自分と人は何が違うというのだろう。
……ないものねだりは同じだ。自分は、この永い生に疲れたのだ。
自分の命を終わらせる事のできなかった私に希望の光を与えてくれたのは、特殊な血をもつ金色の少年だった。

これは、私と彼の希望と絶望の物語。








カーテンをひらくと朝の陽射しが部屋にさしこんだ。眩しい光に照らされた少年は軽く身動ぎしたが、まだ起きないらしい。枕元には本が数冊。昨夜もまた遅くまで勉強していたのだろう。
「…………。」
その柔らかそうな金色の髪に触れようとしてのばした手をとめた。ため息をひとつ。
「んー……」
目を擦りながら彼がゆっくりと起き上がった。
「……朝食ができている。食堂にきたまえ。」
「……ん。」
短い返事を聞いてから私は部屋をあとにした。

「毎晩遅くまで何を調べているんだ?」

朝食の席で私は彼にたずねた。ここの所、彼、エドワードは書斎へこもったり街へ通い何か調べ物をしているようなのだ。何気なくきいたその質問に、彼の小さな体がぴくりとふるえた。
「……あんたに関係ない」
「…………そうか。」
嘘が下手なこどもだ。ため息をひとつ。気づかないふりをしなくてはならない。……気づいてはいけない。お互いのために。
「あんたは……」
「ん?」
琥珀の瞳がゆらりとゆれる。ちらりとこちらをみて、口をひらきかけたエドワードだったが、彼もまた、なんでもないと口を閉ざす。これ以上の言葉は無意味だとわかっているからだ。

彼を縛るのは、10年程前に私がはいた呪いの言葉。たった5つかそこらの幼子に縋るしかなかった、私の弱さ。醜さ。

(あと、すこしだ)

約束の日は、近い。たとえエドワードが望まなくとも、その日はやってくるのだ。


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