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君の血

私を殺してくれ。

あの日のロイの言葉は呪いとなってオレの心を蝕んでいる。
あの血に塗れた場所で弟とたった2人生き残ったオレに救いの手を差し伸べてくれたのは身内を殺した憎い相手と同じ吸血鬼だった。
整った容姿に漆黒の髪と瞳。一見すると普通の人間と変わらぬロイだったけど、その昏い瞳は全てに絶望していた。
あの日ロイの手をとったことを後悔しているのかは、正直悩んでいる。
離れて暮らす弟とオレがこうして不自由なく生活できるのはロイのおかげだ。

だけどーー。

こうして共にすごさなければ、オレの心は彼に傾いたりしなかったのかもしれない。父のように慕い、兄のように慕い、友のように慕い、……それ以上の関係になりたいだなんて考えはおこらなかっただろう。
最初にクギをさされていたというのに。

「……」

もう長いこと、オレはみちをさがしている。生きてほしいオレと、死にたいロイで交わることのないみちを。

(……、すま、ない)

あの日。オレに触れた手の優しさや冷たさを思い出す。額に粒のように浮かんだ汗にひろい胸。そっと触れた背中は大きくて逞しかった。謝罪の言葉なんていらなかった。多分、オレはもうずっとあの腕に抱かれたかったのだ。男同士だとかそんなものはどうでもよかった。あのさみしい人の心が欲しかった。あれはたった一度きりのチャンスだと思った。触れてくれれば、ひとつになれば心がわりするかもしれないなんて甘い考えをいだいた。

「はは…っ…」

乾いた笑いがこぼれる。みちがみつからない。このままだと約束の日がきて、オレはこの血でロイをー。



→ロイ視点
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