第三章『ロボット博覧会への誘い』
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二人を見送った瑠璃が部屋のドアを閉めると、その音でハッと我に返ったらしいクリスは、おろおろと部屋の中を歩き回り始めた。
「まさか、ねーさんがいるなんてえええっ」
「この子、君が造ったんだろ?」
悲鳴に近い声を上げたクリスに、ハーモニーが一体のロボットを示した。
―――手の平サイズの二頭身ロボット・エプシロン。
それは音井教授の助手として、音井家に住み始めてから、初めてクリスが造ったロボットだった。
当初は、今よりも遥かに大きいロボットだったのだが、暴走した際にシグナルによって大破され、現在の大きさになってしまったのである。
「シグナルに壊される前のエプシロンならいざしらず! 今のエプシロンじゃ鼻で笑われるのがオチよ!!」
「自業自得だな」
喚いたクリスは、聞こえてきたパルスの言葉にピキッと表情を強張らせると、動きを止めた。
けれど、それは一瞬のことで、すぐさまパルスへとそのまま噛み付いていった。
「パルス―――――っ、あんた他人事だと思って――――!!」
「私に何が出来るという」
静かな声で切り返してきたパルスに、ころりと態度を変えクリスは一言「助けて」と告げる。
え? とその言葉にパルスが呆然とした表情を浮かべると、様子を見ていた瑠璃が口を開いた。
「―――腕前を見せなければならない訳だから、クリスちゃんはきちんと自分の整備をしてくれているって、パルス君が証言すればいいんじゃないかしら?」
「瑠璃さんの言う通りよ! いっつもあたし、あんたのことしか整備してないんだからっ!!」
瑠璃の言葉に、またクリスが勢いを取り戻したのを見て、パルスは眉根を寄せる。
けれど、笑みを浮かべてこちらを見てくる瑠璃と視線が合うと、明らかに乗り気ではない表情を顔に浮かべてはいたものの、結局パルスはクリスに協力をすると口にしたのだった。
「・・・仕方がない。瑠璃に免じて、今回は協力をしてやろう・・・」
「ほんと? 良かったわね、クリスちゃん。―――じゃあ、私ちょっと建物の中を信彦君と回って来るから」
つまるところ、パルスもシグナルと同様に瑠璃に対しては弱い部分がある、ということなのだが、それに気づいていない瑠璃は「良かったわねクリスちゃん」と笑むと、ちょっと散歩に行って来るね、とそのまま信彦と一緒に部屋の外へと出掛けて行ってしまった。
外の景色が一望できるガラス張りの場所、そこに隣の部屋で信彦が出会ったという少女の姿が在った。
窓に手をつき、はあ、と溜息を洩らした少女は「やあ」と信彦が呼びかけると、ビクッと体を震わせ、おず・・・とこちらを振り返って来た。
「こんにちわっ、そこ眺めいいよねっ。俺、音井信彦。君さあ、お母さんと来たんだろ? 俺も父さんと母さん、それに瑠璃姉ちゃんと、皆で来たんだ」
信彦と一緒に少女に歩み寄った瑠璃は、少女と同じ視線まで腰を落とした。
「こんにちは。信彦君から聞いたんだけど、一緒に居たロボット〝雷電〟って貴女のお母さんが造ったものなのかな?」
人見知りが激しいようで、少女は二人から少しずつ距離を取ろうしていたのだが、雷電の名前が出ると、微かに反応を見せてきた。
「うちにもロボットいっぱいいるんだよ―――。今度、皆に会わせたげる」
「ロボット?」
信彦の言葉に、漸く少女が言葉を発したのを見て、瑠璃はふわりと微笑し、少女に尋ねた。
「ロボット好きなの?」
「うん。でも〝雷電〟が一番好き」
はにかむような表情で少女が答えると、壁に掛けられていた時計から、四時のチャイムが鳴り響いてきた。
それを聞き、瑠璃はそろそろ戻った方がいいだろうか、と考える。
コンスタンスがクリスに設けた期限が、今夜の歓迎会までなのだ。
すると、同じようにチャイムに反応して「あ」と声を洩らした少女も、時間だから行くね、と告げてきたので、信彦が少女に名前を尋ねた。
「そうだ。名前教えてもらえる?」
「マリエルっていうの。―――信彦君、瑠璃おねえちゃん、あとでロボットさん達と会わせてね」
「えぇ。またね、マリエルちゃん」
手を振り、歩き出したマリエルを、信彦と一緒に見送り、その姿が見えなくなると、瑠璃も信彦と共に、その場を後にした。
部屋に戻ってから暫らくすると、コンスタンスが雷電と、それにマリエルを連れてやって来た。
威圧するかのような空気を纏うコンスタンスを、クリスは負けじと視線を逸らすことなく見返す。
部屋の真ん中で二人は互いに睨み合うようにして立っていたのだが、やがてクリスが耐え切れなくなってきたのか、小さな唸り声を洩らすと、コンスタンスはあごに手を当てながら告げてきた。
「さて・・・こうして睨み合っててもなんだし、クリス! あんたがここに居れる資格があるか見せてもらいましょ―――か」
口の端をにやりと上げ、「ま! 無理でしょうけど」と迫ってきたコンスタンスに、うっ、とクリスは引き攣るも、
すぐさま少し離れて様子を見ていたパルスの腕を掴み叫んだ。
「そんなことないもん!!」
「パルス君は音井教授のロボットだからね―――」
あんたのじゃないよっ、と眉を顰めたコンスタンスに、パルスは自分のために証言してくれるのだとクリスは言い、そのまま噛み付く勢いで「あたしがどんなふうに音井教授の助手をしてるか聞きなさいよっ」と吼える。
そのクリスのその剣幕に、パルスは溜息を吐き出し、口を開いた。
「資格があるか私にはよく分からんが見せられるものはある」
これだ、とパルスがコンスタンスに差し出したのは、エプシロンだった。
けれど、そのエプシロンはクリスがコンスタンスに見せまいと隠していたものだった為、
「クリスが造ったロボットでエプシロンという」
パルスが告げた瞬間、クリスの絶叫が室内に響き渡った。
ばかー!! あんたばかよ―――、とひとしきりパルスにクリスは喚くと、ペタッとその場に座り込む。
「はああああ、終わりだわ――~っ。あんなカタ苦しい家に帰らなきゃいけないのおお」
「そんなことはなかろう」
絶望に打ちひしがれていたクリスは、聞こえてきたパルスの声に、ハンカチを噛み締め、あんたにはわからないのよっ、と叫ぶ。
すると、ちびシグナルを頭に乗せていた信彦の傍にパルスは移動し、パチンと指を鳴らした。
「さて、これは私の弟」
「―――信彦君、ちょっとごめんね」
パルスがちびシグナルを手で示すと同時に、信彦の隣に居た瑠璃がコショウを振りまく。
「へ? 瑠璃姉ちゃん、何を・・・」
瑠璃行動に眉を顰めた信彦は、鼻に刺激を受け、くしゃみを放つ。
瞬間、ボンッという音が響き、ちびシグナルが白光に包まれた。
「A――ナンバーズ最新型SIGNAL 君です」
シュゥゥゥと、光が収縮した中に現れた、青年シグナルを瑠璃が紹介すると、パルスはコンスタンスに向き直り話を続けた。
「そこのエプシロンはシグナルと闘って、破損され小さくなりましたが、かなりいいところまでシグナルを追い詰めたと聞きました。まだまだ未熟でしょうが、音井教授の助手としては、まぁやっている方ではないでしょうか」
以上、とパルスが言うと、口元にコンスタンスは手を当て、やがて弾かれたように笑い出した。
「音井教授のロボットに言われるとね―――あはは」
額に手を当てながら、コンスタンスは、分かった、分かったと頷き、クリスにエプシロンを放り渡す。
「いや―――パルス君、よくこんな妹の弁護してくれたわ―――。ありがとうっ」
そしてパルスに礼を言うと、そのまま喉が渇いたからと、コーヒーを飲みに行ってしまった。
どうやら、クリスは実家帰りを免れたようだった。
こうしてサイン家の姉妹仲はひとまず落ち着いた訳なのだが、今回の出来事はこれから起こる出来事への序章でしかなく・・・・・。
「良かったわ、ケンカにならなくて。兄弟姉妹で争うなんて悲しいですもんね」
また安堵の笑みを浮かべ言ったエララの言葉を、そのとき部屋のドアの外で聞いていた人物が居て、その人物がとても冷ややかな眼差しでエララを見つめていたということを、その時はエララも含めて、誰も知る由もなかったのだった。
<後書き>
ここまで読んで下さってありがとうございました。
第三章のリュケイオン編(1)
この話は、過去にあるサイトに貰っていただいたものを大幅に加筆修正したものです。
今回は、キャラとの絡みが少なかったですが、次回はもう少し増えるかと思います。
それでは♪
05・4/6 朱臣繭子 拝
05・5/14一部改訂
「まさか、ねーさんがいるなんてえええっ」
「この子、君が造ったんだろ?」
悲鳴に近い声を上げたクリスに、ハーモニーが一体のロボットを示した。
―――手の平サイズの二頭身ロボット・エプシロン。
それは音井教授の助手として、音井家に住み始めてから、初めてクリスが造ったロボットだった。
当初は、今よりも遥かに大きいロボットだったのだが、暴走した際にシグナルによって大破され、現在の大きさになってしまったのである。
「シグナルに壊される前のエプシロンならいざしらず! 今のエプシロンじゃ鼻で笑われるのがオチよ!!」
「自業自得だな」
喚いたクリスは、聞こえてきたパルスの言葉にピキッと表情を強張らせると、動きを止めた。
けれど、それは一瞬のことで、すぐさまパルスへとそのまま噛み付いていった。
「パルス―――――っ、あんた他人事だと思って――――!!」
「私に何が出来るという」
静かな声で切り返してきたパルスに、ころりと態度を変えクリスは一言「助けて」と告げる。
え? とその言葉にパルスが呆然とした表情を浮かべると、様子を見ていた瑠璃が口を開いた。
「―――腕前を見せなければならない訳だから、クリスちゃんはきちんと自分の整備をしてくれているって、パルス君が証言すればいいんじゃないかしら?」
「瑠璃さんの言う通りよ! いっつもあたし、あんたのことしか整備してないんだからっ!!」
瑠璃の言葉に、またクリスが勢いを取り戻したのを見て、パルスは眉根を寄せる。
けれど、笑みを浮かべてこちらを見てくる瑠璃と視線が合うと、明らかに乗り気ではない表情を顔に浮かべてはいたものの、結局パルスはクリスに協力をすると口にしたのだった。
「・・・仕方がない。瑠璃に免じて、今回は協力をしてやろう・・・」
「ほんと? 良かったわね、クリスちゃん。―――じゃあ、私ちょっと建物の中を信彦君と回って来るから」
つまるところ、パルスもシグナルと同様に瑠璃に対しては弱い部分がある、ということなのだが、それに気づいていない瑠璃は「良かったわねクリスちゃん」と笑むと、ちょっと散歩に行って来るね、とそのまま信彦と一緒に部屋の外へと出掛けて行ってしまった。
外の景色が一望できるガラス張りの場所、そこに隣の部屋で信彦が出会ったという少女の姿が在った。
窓に手をつき、はあ、と溜息を洩らした少女は「やあ」と信彦が呼びかけると、ビクッと体を震わせ、おず・・・とこちらを振り返って来た。
「こんにちわっ、そこ眺めいいよねっ。俺、音井信彦。君さあ、お母さんと来たんだろ? 俺も父さんと母さん、それに瑠璃姉ちゃんと、皆で来たんだ」
信彦と一緒に少女に歩み寄った瑠璃は、少女と同じ視線まで腰を落とした。
「こんにちは。信彦君から聞いたんだけど、一緒に居たロボット〝雷電〟って貴女のお母さんが造ったものなのかな?」
人見知りが激しいようで、少女は二人から少しずつ距離を取ろうしていたのだが、雷電の名前が出ると、微かに反応を見せてきた。
「うちにもロボットいっぱいいるんだよ―――。今度、皆に会わせたげる」
「ロボット?」
信彦の言葉に、漸く少女が言葉を発したのを見て、瑠璃はふわりと微笑し、少女に尋ねた。
「ロボット好きなの?」
「うん。でも〝雷電〟が一番好き」
はにかむような表情で少女が答えると、壁に掛けられていた時計から、四時のチャイムが鳴り響いてきた。
それを聞き、瑠璃はそろそろ戻った方がいいだろうか、と考える。
コンスタンスがクリスに設けた期限が、今夜の歓迎会までなのだ。
すると、同じようにチャイムに反応して「あ」と声を洩らした少女も、時間だから行くね、と告げてきたので、信彦が少女に名前を尋ねた。
「そうだ。名前教えてもらえる?」
「マリエルっていうの。―――信彦君、瑠璃おねえちゃん、あとでロボットさん達と会わせてね」
「えぇ。またね、マリエルちゃん」
手を振り、歩き出したマリエルを、信彦と一緒に見送り、その姿が見えなくなると、瑠璃も信彦と共に、その場を後にした。
部屋に戻ってから暫らくすると、コンスタンスが雷電と、それにマリエルを連れてやって来た。
威圧するかのような空気を纏うコンスタンスを、クリスは負けじと視線を逸らすことなく見返す。
部屋の真ん中で二人は互いに睨み合うようにして立っていたのだが、やがてクリスが耐え切れなくなってきたのか、小さな唸り声を洩らすと、コンスタンスはあごに手を当てながら告げてきた。
「さて・・・こうして睨み合っててもなんだし、クリス! あんたがここに居れる資格があるか見せてもらいましょ―――か」
口の端をにやりと上げ、「ま! 無理でしょうけど」と迫ってきたコンスタンスに、うっ、とクリスは引き攣るも、
すぐさま少し離れて様子を見ていたパルスの腕を掴み叫んだ。
「そんなことないもん!!」
「パルス君は音井教授のロボットだからね―――」
あんたのじゃないよっ、と眉を顰めたコンスタンスに、パルスは自分のために証言してくれるのだとクリスは言い、そのまま噛み付く勢いで「あたしがどんなふうに音井教授の助手をしてるか聞きなさいよっ」と吼える。
そのクリスのその剣幕に、パルスは溜息を吐き出し、口を開いた。
「資格があるか私にはよく分からんが見せられるものはある」
これだ、とパルスがコンスタンスに差し出したのは、エプシロンだった。
けれど、そのエプシロンはクリスがコンスタンスに見せまいと隠していたものだった為、
「クリスが造ったロボットでエプシロンという」
パルスが告げた瞬間、クリスの絶叫が室内に響き渡った。
ばかー!! あんたばかよ―――、とひとしきりパルスにクリスは喚くと、ペタッとその場に座り込む。
「はああああ、終わりだわ――~っ。あんなカタ苦しい家に帰らなきゃいけないのおお」
「そんなことはなかろう」
絶望に打ちひしがれていたクリスは、聞こえてきたパルスの声に、ハンカチを噛み締め、あんたにはわからないのよっ、と叫ぶ。
すると、ちびシグナルを頭に乗せていた信彦の傍にパルスは移動し、パチンと指を鳴らした。
「さて、これは私の弟」
「―――信彦君、ちょっとごめんね」
パルスがちびシグナルを手で示すと同時に、信彦の隣に居た瑠璃がコショウを振りまく。
「へ? 瑠璃姉ちゃん、何を・・・」
瑠璃行動に眉を顰めた信彦は、鼻に刺激を受け、くしゃみを放つ。
瞬間、ボンッという音が響き、ちびシグナルが白光に包まれた。
「A――ナンバーズ最新型
シュゥゥゥと、光が収縮した中に現れた、青年シグナルを瑠璃が紹介すると、パルスはコンスタンスに向き直り話を続けた。
「そこのエプシロンはシグナルと闘って、破損され小さくなりましたが、かなりいいところまでシグナルを追い詰めたと聞きました。まだまだ未熟でしょうが、音井教授の助手としては、まぁやっている方ではないでしょうか」
以上、とパルスが言うと、口元にコンスタンスは手を当て、やがて弾かれたように笑い出した。
「音井教授のロボットに言われるとね―――あはは」
額に手を当てながら、コンスタンスは、分かった、分かったと頷き、クリスにエプシロンを放り渡す。
「いや―――パルス君、よくこんな妹の弁護してくれたわ―――。ありがとうっ」
そしてパルスに礼を言うと、そのまま喉が渇いたからと、コーヒーを飲みに行ってしまった。
どうやら、クリスは実家帰りを免れたようだった。
こうしてサイン家の姉妹仲はひとまず落ち着いた訳なのだが、今回の出来事はこれから起こる出来事への序章でしかなく・・・・・。
「良かったわ、ケンカにならなくて。兄弟姉妹で争うなんて悲しいですもんね」
また安堵の笑みを浮かべ言ったエララの言葉を、そのとき部屋のドアの外で聞いていた人物が居て、その人物がとても冷ややかな眼差しでエララを見つめていたということを、その時はエララも含めて、誰も知る由もなかったのだった。
<後書き>
ここまで読んで下さってありがとうございました。
第三章のリュケイオン編(1)
この話は、過去にあるサイトに貰っていただいたものを大幅に加筆修正したものです。
今回は、キャラとの絡みが少なかったですが、次回はもう少し増えるかと思います。
それでは♪
05・4/6 朱臣繭子 拝
05・5/14一部改訂